イタリアのとある屋敷ではパーティーが行われていた。きらびやかで優雅なようにみえるが、よく見ると目つきの鋭い者、人相の悪い者、気の強そうな者、やけに多い警備員…そこはマフィアのパーティーだった。


「皆様ネオストラファミリーの九代目、雨音美々様です」

ステージから司会者が大袈裟に頭を下げる。端から黒いマーメイドドレスに身を包んだまだ成人とは言えないような女が真ん中へと進んでいた。しんとする会場、あんな小娘…という声がしたがそれはすぐに覆された。彼女から発せられるオーラはボスそのものであった。

「初めまして、ネオストラファミリー九代目となりました雨音美々です」

しんとした空気の中に凛と人響く声、聞いた者は彼女への印象を大きく変えざるを得なかった。それはボンゴレファミリーを代表してきたチェデフの沢田家光も同様だった。周りはきっと大きく変わるだろうネオストラに媚びを売るため笑みを張り付け美々にへつらった。

「美々嬢、今度ぜひ我が屋敷へお越しいただく存じます」
「えぇ、よかったら同盟も結んで下さい」

家光は段々と近付いてくる彼女に挨拶しようと足を進めた。ゆっくりながら歩いていた美々の足がピタリと止まった。険しい表情、やはりなとバレないように息を吐いた。ボンゴレとネオストラ、まだ確執があるようだ。勿論、今のボンゴレは8代目、9代目あたりから基本的には他のファミリーとも友好的である。だが昔の罪ともいえる象徴、ネオストラとだけは中々連絡をとることができなかった。相手側が頑なにボンゴレの接触を嫌がったからだ。

「始めてまして、だな。俺は――」
「知ってるわ、沢田家光さん…ボンゴレの門外顧問チェデフのトップ。そして次期ボンゴレ十代目沢田綱吉の父親」
「!」

まさかこんなに情報収集力があるとは…。思わず辺りを見渡したが自分がボンゴレの代理で来てると知ってるためか、他の招待客は少し離れたところにいた。

「バラすつもりはないわ。私が握る弱みの1つだもの…損になんかしない」
「弱み、だと?君はボンゴレを敵に回すつもりなのか?」
「敵…ですって?よくもそんなこと言えるわね…!」
「ボス、落ち着いて」

隣に待機していた精悍な顔つきの男が美々を諌めた。だがその目は家光を憎々しげに睨みつけ、殺意さえ感じられた。

「…近々、そちらに伺うでしょう。やるなら正々堂々と、我等ネオストラファミリーは戦いますから」
「……」

そうしてまた笑みを張り付けた美々は待ち侘びた人たちの元へとまた歩き出した。これから起こるであろう、戦いを想像して家光は溜め息をついた。