深夜、私は大きなボストンバッグを片手に家を出た。扉を閉め家の鍵を部下に渡す。振り返るとちょこんと黒ずくめの赤ん坊がいた。全く存在を消すなんて嫌な赤ん坊ね…、リボーン。

「イタリアに帰るのか」
「えぇ、長い間うちのファミリーにはボスがいなかったから…そろそろしっかり上がいないと身内で争いが始まるから」
「そのボスとしての心、ダメツナに教えてやりたいくらいだ」
「………え、いま…なんて言った?」

頭が真っ白になった。どういうこと…ツナに、ボスの心…?周りにはマフィア絡みの人たち、そしてアルコバレーノ。そこから推測できない程美々は馬鹿ではなかった。どうして気付かなかったんだ…!

「なんだ、知らなかったのか。あいつは次期ボンゴレのボスだぞ」
「!!!うそ…」
「嘘じゃねーぞ。ツナの父親はボンゴレの門外顧問だしな」

もう聞きたくなかった。鉛が付いてるように遅い足どりで黒いベンツに乗り込んだ。動き出した車の中、倒れ込むように背もたれに身体を預けた。

「ツナが、ボンゴレ…?ははっ、笑えない」

だからマフィア関連の人間があんなにも周りに居たのか…くそっ。自分の不甲斐なさに呆れて何も言えなかった。車は静かに高速にさしかかる。一定にライトが美々の顔を照らす。その表情は影っていた。

「…全面対決、しかないのね」

車内でそっと、自分に言い聞かせるように呟いた。そっと首からかけていた指輪を中指に嵌める。リングがまるで主にはめられるのを喜ぶかのようにオレンジの炎が灯った。