次の日から私の隣にはいつも武が居た。朝起きて少しご飯を食べ家を出ると彼がにこりと笑って「おはよう」と告げる。手を繋いで学校まで行き彼は野球部に顔を出しに行った。教室に行き友達と話していると武がひょっこり顔を出してくる。当たり前のように隣を陣取る彼にびっくりして友達は怪訝そうな顔をして私を見つめた。私が沢田綱吉と付き合っていたのだから当然の反応だ。私は後で、と口パクで伝えて会話を続行させた。もうすぐチャイムがなりホームルームの時間になる。少しずつ席や教室に戻る人が居る中、武も名残惜しそうに教室を出ていった。姿が見えなくなった瞬間に集まる人たち。

「ちょっと美々どういうこと!?」
「山本くんと付き合ってんの?」
「じゃあ沢田くんと別れたの!?いつどっちからなんて告られたの!」
「あんなにラブラブだったのに…理由はなんで?」

マシンガンのように早く自分の知りたいことのみをまくし立てる友達に押され気味でいると廊下からバタバタとこちらに走ってくる音がした。…遅刻ギリギリで校門を通ってきた人だろうと思ったら、―――綱吉だった。怖い顔をしてずんずんと私に近寄り無言で手首を掴まれる。

「!」

無理やり立たされ廊下へと連れ出された。唖然とする友人たちを尻目に私は綱吉に屋上へと連れてこられた。

「…っ、痛い!ちょっと、腕!」
「!あ、嗚呼…」
「もう…何よ急に」
「分かってるだろ?そっちこそ急になんでだよ…わ、別れるって」
「!……っ」

やはりその話題か。覚悟はしていたつもりだったがドキンとしてしまった。バクバクと心臓が動いている。バレちゃだめ…っ。私は仮面を付ける。

「べつに…武が好きになったからだよ」
「可笑しいじゃないかッ!!―――急すぎるだろ…?」

泣きそうな声が震えている。空気を伝って私まで震えそうになる。それでも私は拒絶するかのように背を向けた。

「授業遅れるから先行くね、……沢田くん」
「……美々、……」

肩が震えそうになるのを堪え、校舎の中へ戻りぱたんと屋上の扉を閉める。崩れそうになる身体を奮い立たせる。

「…言っちゃうかと思ってた」
「……私は、約束は守るから」
見えない位置の壁に寄り掛かっていた彼は少し緊張したような面持ちでいた。…私は弱小ながらもマフィアのボス、約束くらい守る。私の、誇りにかけて。