「お、美々なのなー」
「あ、武くん…」
「普通に呼び捨てでいいって!そうだアド教えてくれよ」
「……いいよ、はい赤外線」
「ん、…おー届いた届いた、後でメールするな!」

彼らしい野球のストラップのついた携帯を片手にぶんぶん手を振りながら去っていく武。私も軽く手を振った。

「…」

この頃たくさん武が構ってくれる。ツナより話し掛けてきてくれてる。私だって馬鹿じゃない、武がどういった思いで私に近付いているか。…嫌だなあ、こんな事にまで疑いもっちゃう。これもマフィア、のせいなんだから!とにかく、私にはツナがいる、沢田綱吉という存在がいる。

「……はぁ」

それでも、一波乱ありそうな予感がした。それは私の超直感、なのかもしれない。

***

「ツナー…武とは中学で仲良くなったんでしょ?」
「………んーそうだよ、それがどうかしたの?」
「………ん、ただ気になっただけ」

そっか、とそのままピコピコと携帯ゲームを続行させるツナ。……もうちょっとは妬いてほしい。そう思った言葉は声には出さなかった。無駄なことで、喧嘩はしたくない。

あ、そういえば。ツナが思い出したかのように携帯を充電器にさしながら私の方を向いた。

「修学旅行、どこ行くか決めた?」
「……北海道か京都奈良、大阪、広島長崎、沖縄でしょ?」
「うん、獄寺君なんてもう京都に行く気満々でタイムスケジュールまで考えてるんだ…」

妙にやつれた表情でツナは笑った。…よほど細かいスケジュールなのだろう、見たくない。

「私はどこでもいいよ?ツナと一緒なら」
「っ!可愛いこというなよ襲いたくなるじゃん」

隣にいたツナはぎゅうっと抱きしめてきた。ここは教室、いつ誰が来るか分からない場所。いつもよりドキドキが聞こえる気がした。

「つ、ツナ!人来るかもよ?!」
「そんなの関係ない」

何処かで聞いたような一言に私は諦めて瞳を閉じた。
だから教室の後ろの入口で少し顔を歪ませてこちらをみている武には気付かなかった。