池袋の中心に彼女の家はあった。何処にでもあるマンションの5階の隅、そこが美玲の借りている部屋だった。昔は家族と住んでいた、でもある事件で私だけ残されたのだった。その事は、もうどうでもいい。彼女の目的は、いつまでも、そこにいて、待ち続けること、であるからだ。その部屋から明かりが消えることはなく、誰かを待ち続ける。

「…今日も駄目かあ」

 ため息をついて窓辺を見上げるともう朝日が昇る時間であった。彼女の傍らにはレイピアと拳銃、弾やナイフなど物騒な品々が置かれていた。美玲はそれらをいつもの隠し場所にしまうと寝室へとレイピアを抱きしめながら移動した。必要最低限に抑えられている部屋の中に一際目立つように1枚の写真が写真立てに収められていた。満面の笑みを浮かべた4人の家族写真、1人だけ顔を真っ黒に塗り潰されている。それを一瞥してから美玲はベッドに倒れ込むようにして深い眠りに入った。休まる時間は本当はない、一瞬でさえ家族を殺した奴らを殺すために使いたいのだ。臨也が悪いのは当然ではあるが、生きている私も悪いのだ。