「美玲、いいのかい?」 珍しく焦った表情の彼に私は優越感を得ていた。 「私は決意したの。…まあ前から考えていたことだけどね」 「だからって何故今なんだい」 「私の役目は、終わりだからよ」 桃栗会はもうおしまいだ。とある垂れ込みからヤクの回収ルート、武器の収集活動、そして誘拐や殺害依頼などを引き受けていたことが判明したからだ。それを警察が漸く裏を取り家宅捜索を行い、逮捕にまで至った。彼らは大人しく捕まった。何故なら、私が殲滅しておいたからだ。警察は首をひねっていたがヤクザ同士の争いだということでその疑問を頭からたたき出した。 「君、いいのかい」 「女に二言はないわ」 「俺のことも、復讐対象だろ」 「貴方には生きて私からの恨みに耐えてもらうわ。…貴方はそう簡単には死ななそうだからね」 うふふと笑みを浮かべる。久しぶりに、笑った気がした。それとは対照的に奴は顔をしかめた。自分の思い通りにならず悔しいのだろう。 「何故抱かれたか、わかる?」 「………」 「誰か他の人とヤる時にでも私を思い出させるためよ!あははははは!!!」 「狂って、る」 私は笑いを収めた、本当に私の目の前にいるこの男は折原臨也なのかしら?まあ、どうでもいいわ。 「じゃあ、ね」 「っ!待て美玲っっ!!!!」 手が伸びてきた。それを跳ね退け流れに身をまかせた。 ざまあみろ。 意識が消えかける前、思い浮かんだのは最愛の両親ではなく、憎いはずのあいつだった。 **** 「私はあんたを憎んでいた。でもそれと同時に貴方に惹かれていた。それは抱いてはいけないモノで、私はそれをも復讐に利用した。 ねぇ、あんた恋愛したことあるの?私はないわ。カッコイイ人を見たらときめいたり、彼氏が欲しいと思ったことはある。でもね、理想や私が手を伸ばせる男の人は偶然にもいなかった。…きっと、ここを読んだあんたは爆笑してるんでしょうね。この私が、暗殺のことしか特化してない私な一般人のようなことを考えてたんだから。………ううん、だからこそ普通を求めてたのかもしれない。それがたまたま、偶然にもあんただった。矛盾しているの、私は」 ここで手紙は途切れていた。その男はそれを胸ポケットに入れてからその部屋を立ち去った。一枚の写真を一瞥してから。そこには家族4人、顔を真っ黒に塗り潰して。 完結 |