殺しの道に入るとは折原臨也も思っていなかったようで、複雑そうな顔をしていた。思い通りにならなくて悔しいのだろう。私は、あんたに復讐してやる。獲物を睨みつけてから早数年。彼は情報屋になり私は(殺し屋)と高校生になった。今日も私はニセモノの日常を送っている。

「あああ美玲ちゃあああん!」
「ちょ、っと正臣!雨音さんに抱き着いてるんだよ?!」
「俺たちの愛を邪魔させはしないよ!ね、美玲ちゃん」

「どうでもいいです。放して斬るよ」

何とも言えない空気になり流石の正臣も後ろから首に回してした腕を放した。目の前には気弱そうな少年と眼鏡の少女。少女の方は何も言わずただ私を見つめていた。

「もう、そうやって冷たいんだから!ツンデレなんだなー」
「ほんっっっと正臣ってポジティブだな…」

後から聞いた…というか説明されたのだが少年は竜ケ峰帝人という。少女は園原杏里、私と似たような感じがした。

成り行きで一緒に帰るような形になってしまい、前に男2人、その後を私たちが着いていくものとなった。勿論、話すことなんかないので無言だったが意外なことに杏里の方から話しかけてきた。

「あ、の…!」
「…どうかしましたか?」
「!え、えっと…その…どうして美玲さんは、そんな悲しそうな目をしてるんですか?」
「悲しそうな、目…?」

初めてそんなことを言われたので困惑してしまった。悲しいなんて感情はとうの昔に捨ててきたはずなんだけどな。私は笑みを顔に貼り付けた。

「貴方に、何が解るのかしら?たしかに私は過去の悲しみから逃がれられてないわ。むしろ一層捕われているわ…でもこれが日常なのよ?いまさらこの状況を変えられないし、変えようとも思ってないわ!」
「ですが…幸せは、」
「幸せ?私とは程遠いものね。…それで構わないわ、私はこの気持ちにケリをつけるために生きてるようなもんだもの!…それじゃあ」

私はひらひらと手をふり彼女らから離れた。何か言い足そうな正臣に口パクでただ「しってる」とだけ伝えた。驚く顔、そして歪んで泣きそうな顔。何故貴方がそんな表情をするのか、解らなかった。



殺したのは桃栗会、唆したのは折原臨也。



それよりも私は彼女の言葉が気にかかった。なぜ、罪歌があんなに大人しいのだろうか。そして、幸せという言葉を吐き出したのか。