この頃調子が悪い。
上手く泳げない。
呼吸もしずらい。
ユキも私の異変に気付いたらしく、眉を垂れ下げながら私を見ていた。水面に浮いてしまいそうな身体を必死にひれで抑える。でも、もう、無理―――
ふわりとからだがういた。
おかーさぁーん!とユキが叫んでいる。大袈裟だなあ、そう考えながら意識が黒に包まれた。その瞬間、思い出したのは数日前にユキに見せられた写真だった。黒髪の、外国人。灰色の瞳を社交用に細めて微笑んでいる男の子。何故か、不思議な気持ちに囚われた。こんな気持ち、ハジメテだった。
―君は、彼に会いたいかい?―
だ、れ…………
―君の寿命は短い―
嗚呼、やっぱり…
―君は、彼に会いたいかい?―
か、れ………?
―灰色の瞳の、彼だよ―
あ、あ、会いた、い
―それじゃあ、対価に少しの寿命をもらう―
たい、か?
―会う為の条件だよ―
どうせ、少ない、命だか、ら
―君は、伝えられるか?―
な、にを……………
―君が だということだよ――
聞こえ、ない………
―さあ、最期まで泳ぎなさい―
ま、眩し………い……………
ぱちりと目を開ける。目の前には大きな瞳。ユ、キ…?なんで、そんなに急に、大きくなってるの?
「チハルが目覚めたわ!…貴女は6年は寝てたのよ」
そんなに…。だから大人っぽくなっているのか。自分の身体が少しだけ、痩せてる気がした。
「無理矢理寝させて、寿命を延ばしたの…でももう、少ししか生きれない、って…」
涙を溜めながら話すユキ。泣かないで、笑っていてよ。私なんかの為に、泣かないで欲しい。
「貴女に、お願いがあるの」
―――
チハルは7さいくらいの時にユキちゃんに買われたのだとさ、豆知識でした。
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