あれから1年経った。
彼女―――ユキはしっかり私を世話してくれたのでまだ私は生きてる。ユキがいい子なのはすぐに分かった。彼女に好感を持つのも時間の問題だった。
「チハルー、今日はパーティーなのーこんやくしゃ、って人に会うのよ」
婚約者の意味が分からないようでこんにゃく的な発音になっている。(私もユキも、英語と日本語が分かる、ちなみに今の会話は日本語だ)
ゆらり
頑張れというように私は尾を揺らした。それを見てぶんぶん手を振り、ピンクのドレスの裾を翻し彼女は出ていった。
辺りは暗くなり、時計が真夜中を示す頃にようやくユキは帰ってきた。慣れない夜のパーティーでフラフラしているが、どことなく落ち着きがないのはすぐ分かった。
「チハル…こんやくしゃに会ったよ……とってもすてきな人だったの」
「こんやくしゃ、ってね、おとうさまとおかあさまのようになることなんですって!」
また、会えるかな?そうつぶやくユキはとても可愛かった。私は複雑な気持ちに襲われた。ユキが、とられるような、そんな感じ。……馬鹿らしいもう金魚でいう大人の私が、そんな事に心を揺るがすなんて。
この時は知らなかった。もっと、私の心を、人生(魚生)を揺るがす事がおきるなんて。
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