「いいですか、絶対に外へ行ってはいけません」
(コクコク)


「5、6時間は帰って来れないんで本当に気をつけて下さい」
(コクコク)


「もし出たら、クリーチャーの」
「分かりましたぁあぁっ!」


金魚鉢の中でゆらゆら揺れながら首を振っていたチハルだが最後の言葉に慌てて元に戻って首を大きくぶんぶん振っていた。…僕妖精と何かあったのか?


首元にある蝶ネクタイをもう一度確認してからレギュラスは出ていった。チハルは、1人。




「ひま、だな〜」

レギュラスのイジワルっ!後少ししかない私の時間を知ってながらパーチィに行くのね!?(……)ちくしょう、部屋をグリフィンドールカラーにしてやる!悪戯でもしようかと立ち上がった。

その瞬間に扉が開き人を招く。まさか、レギュラス!?


「あっ、早いですねレギュラ、ス…?」


「お前、誰だ…?」



彼と同じ黒髪、灰色の瞳、ブラック家の長男、シリウス・ブラックだった。



「あ、えっと…チハルです」

「ラスの部屋で何やってんだ?」

「いや、悪戯でもしよーかな、ってエヘ」


悪戯と言った途端に彼がピクリと肩を揺らした。まずい、慌ててずらかろうと扉ににじり寄るとシリウスが顔をあげた。


「なーんだ、俺と同じじゃねーか!仲間だったな!」


爽やかな笑顔でキラキラ。シリウス、あほ…?これじゃあレギュラスが大変なわけだ。服装も少し乱れている。ひとしきり笑った後、彼はようやく私に向き合った。


「それにしてもチハル、お前よくこの部屋に入れたな」

「当たり前じゃあないですかあ、金魚鉢ごと……………あ」


「金魚鉢…………?」


しまった、墓穴をほった…。興味津々な目を向けられ仕方なくチハルは口を開いた。


「私、金魚なんです」


「……………はっ?」


「金 魚 !ゴールド、フィッシュ!」

「っあぁ!ってお前、なんで変身できるんだ?」


こうなったら全てを話すしかない。納得いくまで逃さないと語っている、シリウスの黒い笑顔に押されて洗いざらい話してしまった。


「そうか…後少ししか時間が残ってないんだろ?」

「えぇ…あの、シリウスさんが私に会った事、レギュラスには黙ってて下さい」


「?まあ、いいけど…」


「その代わりに、いい事を教えます」


ニヤリと笑う私にシリウスもつられて笑う。いつの間にか書き留める為の羊皮紙と羽ペンが彼の手元にあった。私はそれについてを語りだした。




「面白いな、ニホンって!」


「気に入っていただけましたか?」


「勿論、新学期に早速やってやるよ」


キラキラと笑う彼、とても楽しそうだ。

「だから、最後のお願い…忘れないで下さいよ」

「分かってるよ、俺に任せてとけ」


それじゃあ、とひらひら左手を振ってシリウスは部屋の緑色を一瞥してから(顔をあからさまにしかめて)部屋を出ていった。





「…お願い、しますね」





「私の、願いを」







「彼に伝えるために」






「貴方に、託します」






(この夏だけの 命と決めて)



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