私はアテナである城戸沙織の(お気に入りの)友人である。彼女が女神として覚醒した時、星矢たちが聖域に挑んだ戦いの時も、海界のポセイドンと戦った時も沙織の傍に居た。サガやカノン様たちが冥王軍として蘇ってアテナを討った時も。沙織の身体が消えた時、頭が真っ白になり泣き叫んだ。だが次の瞬間、頭が痛くなりこめかみを押さえながらその場にしゃがみ込んだ。その時ようやく思い出した。わたしは冥王ハーデスの妻、ペルセポネだ。小宇宙が溢れる。悔しそうに俯いていた星矢たちは急に膨れ上がった私の小宇宙に驚いて顔を上げた時にはもう私の姿は無かった。

***


テレポートした先は宮殿のような場所であった。そこには黒髪の美しい女が立っており、カーテンの向こうを守るように立ちはだかった。

「!お前はアテナの傍に居た女…?!何故そのような者がハーデス様のお膝元に…!」
「主の妻に向かい、なんたる無礼だパンドラ」
「妻だと……!もしや、ペルセポネ様であらせられますか!?」

驚いたパンドラは小宇宙を探ると、まさしくペルセポネの大きく、暗く、そして温かな小宇宙を感じ取った。その場にひざまずき頭を伏せる。

「ご無礼をお許し下さい…。ハーデス様がお待ちです」
「人払いを宜しくね」

それだけ言うと微笑みながらパンドラの頭をそっと撫でてからカーテンをずらして玉座へと歩んだ。そこには珍しく笑みを浮かべる冥界の王ハーデスが居た。

「今は美々、と言ったな…。我が最愛なるペルセポネよ」
「ハー君、待たせてごめんね…」
「余は待ち望んでいた、お前が帰ってくるのを」
「さあ、エリシオンに行きましょう。貴方の身体の元に行きたいわ」

ハーデスの足元に座り込み頭を膝に置くとハーデスの白い指が私の髪を優しく梳いた。

「美々…」
「んー、なーにハー君」
「もっと余の傍に」

その言葉に苦笑を浮かべると美々はスッと立ち上がってハーデスの膝に腰を下ろした。直ぐに腰を引き寄せられ肩に顎を置くハーデス。目はトロンとして嬉しそうに息を吐いた。当の美々は夫の長い髪が擽ったく、身体をもぞもぞと動かした。

「ペルセポネ…美々…っ」
「もう離れませんから…私の大切な人…」