「まったく…穿き慣れないピンヒールで踊るから足を痛めるんだよ」
「煩いなレン!仕方ないでしょこれも仕事なんだから!」

美々はピンヒールを脱いで足首をさらけ出してみて顔を歪めた。青くなっている…なんか、さらに痛い。見なきゃよかったとため息をついた。まだ出番がある、けれど少し動かしただけでズキリと痛みが走る。レンが控室に備え付けの冷蔵庫から氷を取り出しビニール袋に入れて持ってきてくれた。

「ほら、冷やしな。気休めの応急処置だけど…」
「んーありがと…」

レンからビニール袋を受け取り患部にあてると冷たさが痛みを和らげてくれるようだった。

やはり痛さで顔が強張ってたのか、緩んだ私の表情にレンが笑った。

「…なんとか、いけそうだな」
「えぇ…あと少しだけあてたら次進むわよ」
「頑張れよ…っと、あぁそうだ」
「ん?」

少しがたつきのあるパイプ椅子に座る私の前にしゃがみ込むように座っていたレンは私の短いスカートからだされた太腿に、………え。

「…おまじないだよ」
「………え、あ…えっ?」
「ハハッ!本番前にその顔はしまってくれよ美々」

面白そうに笑いながら控室を出ていくレンの背中を見ていることしかできなかった。頭にはリップノイズがまだ、響いている。