彼女は空を見上げた。灰色の雲。そして彼女と空の間には窓硝子があり、無情にも立ちはだかっていた。手を伸ばそうとも、掴むことは叶わない。なぜなら彼はもう居ないのだから。

「…メル」

小さな声が部屋に響いた。着飾られた室内、開かれることのない扉。何年もそこで過ごしているのに自分らしさは一切なかった。

「どうして…」

ここは私の居場所ではない。分かっていても、彼女の、エリーザベトの位置に私がいた。

「美々様、お父上がお待ちです」
「……今行きます」

どうして、結末の知っているこの世界のこの場所なのだろうか。そして、芽生えてしまった行き場のないこの感情。

「メル、貴方の居ない毎日は灰色なのよ」



それでも世界は、回っている。









さんホらのMarchenを参考に…というか成り代わりです(>_<)ザベトの位置にヒロインがいる設定でした。