私は目の前の男に見覚えがあった。………ぬらりひょんの孫、奴良リクオ。え、それじゃあここは浮世絵町ってこと!?なんで…。答えの見つからない問題に頭が割れそうだ。リクオが口を開く。
「おい、お前の名は?」 「え、あ……美々です」 「美々か…何処に住んでるんだ?夜道は危険だ、送ってやるよ」
不敵な笑みを浮かべてリクオはそっと私の横に並び腰を引き寄せた。…この、フェミニストめ。顔が赤くなったのが見えたのか空いてる左手で頬に触れてきた。
「赤くなって可愛いな」 「からかわないで下さいっ」 「威勢のいい女は嫌いじゃあないぜ?」 「会話噛み合ってないよ奴良さん」 「リクオ、と呼べ美々」
甘く耳元で囁かれて身体がじんと痺れるような感覚が走った。ぞくりとした感覚から離れる為に、私は両腕に力をこめた。
どんっ
「ち、近寄らないで!」 「ほう…なかなか面白いじゃねぇか。顔も別嬪だしなあ」 「………」 「でもよ、オレのシマに美々なんて可愛い子は見覚えねえな…何者だ?」
さっきまでのおちゃらけた雰囲気は消え去り、鋭い眼光が私を貫いた。
「………」 「答えられないっていうのかい?」 「そ、ういうわけじゃ…。信じて貰えないし」 「言ってみろ、悪いようにはしねぇ」
小さく頷いて私は口を開いた。私にとってここは異世界で貴方たちを間接的に知っている、未来を少し知っていることを。静かに聞いていたリクオは不意に私の腕を引いて自分の腕の中に閉じ込めた。急なリクオの行動にびっくりして固まる美々。
「じゃあ住むところが無いんだな?」 「えっ、…まぁそうだけど…」 「よし…俺んとこに来い」
……………………………は?何を、言ったの、この白髪。
「信じたの?こんな得体の知れない女の話を…」 「お前は俺の仲間を傷付けねぇことくらい分かる。それなら敵じゃねぇ…うちで居候くらいさせてやる」
私は奴良組に厄介になることになった。………はぁ、嫌な予感しかしないよ。
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