心残りがある、そう言えたらよかった。
でもそんな勇気は私の中にはなかったし、そんな可愛くも、性格もいいわけじゃない私が好き、と言って何かが起こるわけじゃない。だからこの関係が続くの。


「メール、待ってるんか?」


隣から声がする。乾いた瞳をゆっくり動かすと赤毛が目に入った。


「どーせ、来ないよ」

「弱気だなぁ」


パチン、と風船ガムを弾かせ笑うブン太を放って教室を出た。小さく笑う声がした。


だって、だってだってだって。彼には私以外にも女友達はいる。その子は可愛くて美人で細くて面白いかもしれない。考えれば考えるほど、暗いことしか思い付かない。嫌だよ、私……わ、私……好き、なのかな?認めたくない、けど胸が痛いくて苦しいよ。






ぱたん、と扉を閉めたあとにブン太はズルズルと廊下にしゃがみ込んだ。自分らしくない、と頭を掻きむしる。

「…仁王のやつ…羨ましいぜ」