ルシウスは珍しく女らしい美々の姿に目をしばたかせた。今日はマルフォイ家で行われているクリスマスパーティー、つまりは死喰い人の勧誘、加入の為の場だ。名家の子息や令嬢、頭の良い魔法使いに魔女が集まっていた。勿論、純血のみだ。その中にひっそりと彼女は佇んでいた。 「やあ美々嬢、楽しんでいるかな?」 「…勿論ですわマルフォイ様」 「おやおや、本当に令嬢のようだ」 「黙れデコ野郎」 そうこなくては、貴女らしくない。美々の俗語にむしろ喜ぶルシウスを見てその言葉を吐いた本人は顔を歪ませた。 「ドM野郎」 「なんと罵られても結構。不利になるのは雨音家だからな」 「さっすが名門中の名門、マルフォイ様だな」 「お褒めに預かり光栄だ」 そう言いながら跪ずくルシウスに「え、」と呆けた顔を露にする美々。 「我らの主が、貴女をご所望だ」 「!それってまさか…!」 「例のあの人、我が君だ」 ぱりんと手にしていたグラスを落としてしまう。ルシウスの頬に水滴が跳ねてしまったが、そんなことを気にしている余裕などなかった。 「な、んで…私を…グリフィンドールよ…敵、みたいな…え…」 「………っ、主の命は、絶対だ」 グラスを持っていた手をとられ甲に薄い唇が押し当てられた。 「!?る、ルシウス…っちょっと…」 「誰も見ていない。これは誓いだ…何があっても君を守ろう」 それが例え魔法界を恐怖で揺るがしているヴォルデモート卿であったとしても。銀の髪が揺れる。…指先に触れている手の薬指には指輪。――ナルシッサ・ブラックとの婚約指輪だ。なんで、こんなにも彼は――― 「………今の言葉、忘れるなよ」 彼が付いてくれるのなら、私はなんでも甘んじて受け入れよう。 手を取り、まるで主従の契りのように ヴォルデモート卿の傍らに居ることを許された私の従者であるルシウス・マルフォイは片時も私の味方でいてくれた。愛して、いたのだろうか。分からない、息子の写真を見たことない穏やかな笑みで見つめていたところを見てしまうまで。 |