花びらがはらはらと目の前を散っていく。視界がよく見えない。この花の名前はなんだったっけ?花びらのいくつかが地に触れる。そこは赤に浸っている。

「嗚呼思い出せない」

ふわっと花びらが増える。掌の赤は何なんだろう。どうしてこんなに鉄の臭いがするの。こんな残酷な仕打ちはなんで私に降り注ぐのだろう。

「嗚呼思い出した」

これだけは。私、あの子たちの敵になったんじゃない。仕方ないじゃない。こんな生き方しかできないんだもの。どうして私が正しい道に居なきゃいけないのよ。

「だからこっちに来てよ」

ねえ、待ってるから。幸せまでは望まないからさ、君の存在だけ私にちょうだい?心までは求めない、憎しみの感情だけでも私に向けて?

歪んでいると言われても構わない。でも、あなたから私が消えることだけは我慢できない。

「ラビ」

忘れることは許さない。記憶の海の隅に追いやられることも嫌よ。


所詮楽園の代用品


我が儘は言わないわ、だから私に終わりを与えて。泪が溢れてあなたが見えなくなる前に、ほら。赤い貴方と同じ花びらが全て地へと堕ちた。全てこの色に染まってしまえばいい。そうすればラビ、貴方を捜さなくて済むから。