ノースリーブの赤のドレスを着た彼女は一際その中では目立っていた。帝王と呼ばれる男―ヴォルデモート卿はその美しさに目を奪われた。本来ならこのパーティーの主催者に話をして帰るだけだったが、変更だ。珍しく笑みを浮かべウェイターからカクテルを2つ受け取り優雅な足取りで彼女に近付いた。 「こんばんは、いい月夜ですね」 「あら、貴方は…もしかしてトム・リドル?」 とうに捨て去った名前を出されムッとしたがそれよりも自分のことを相手が知っていることに驚きを隠せなかった。 「…私をご存知で?」 「知ってるもなにも…私、グリフィンドールで監督生だったもの」 「監督生…もしかして、美々さん?」 名前を呼ぶとにこりと笑う。なんでこんな可愛らしいのに気付かなかったんだろうか。化粧の力だけでなく、彼女は20を越えると美しさが増えるタイプのようだ。 もし、彼女が今魔法界を騒がせているヴォルデモート卿が俺様だと気付いたら…。カクテルを手渡し微笑みながらそんな事を思う。歪んだ思考のヴォルデモートに気付かずカクテルを受け取り礼を言う美々。 「貴方が私の叔父様のパーティーにいらっしゃるなんて…偶然ね」 「え?君はこのウィザード家と血縁なのかい?」 「母様がウィザードの長女だったのよ」 ほらあの肖像画の人よ!と指差す方向を見ると美々によく似た女性が笑みを浮かべて手を振っていた。 欲しい。 そう思ったヴォルデモートはガシッと美々の腕を掴んだ。びっくりする彼女を抱きしめひょいと抱き上げてしまう。 「えっ、リドル、何してるの?!」 「俺様の屋敷に招待してやろう」 バチッと音を鳴らし姿くらましをする。屋敷に姿現しをし抱き上げたまま暗い階段を上がる。ひょこひょこと足を動かし蹴ろうとするがヴォルデモートの力が緩む事はない。ふと目の前に白い何かが見えた。白い、腕。そこに噛み付くように唇を寄せた。 「んっ?!な、なななに…?!」 「細くて白くて…しなやかな腕だな…」 「きゅ、急に何よ…」 「ヴォルデモート卿がお前を愛してやろう」 今名乗っている名前を口にすると目を見開いて美々はヴォルデモートの顔を凝視した。その間抜けな顔を見て嗤うとヴォルデモートは辿り着いたベッドに美々を放り上から被さった。 しなやかに伸びた腕へ 嗚呼早くそのしなやかな腕が自ら私に絡み付けばいいのに! |