「こ、こんばんはレギュラス様!」
「ようこそ我が屋敷に。楽しんで下さいね」

緊張でガチガチの私とは対照的にレギュラス様はふんわりと笑って綺麗な英語を使って話された。上級階級を漂わせる雰囲気、服、そして甘いマスク。お兄さんも素敵な方だったけど家族と折り合いが悪く、今では親友のところに逃げ込んでいるらしい。私の家系はとりあえず純血ではあるが、マグルを見下したりはしていない。だが、こういうパーティーには顔を少し出してご機嫌を取っているのだ。今回は私も参加させられる羽目になり父親を睨みつけておいた。着慣れしないパーティードレス、ハーフアップされた髪、高いヒールを履き、お上品に笑う。…………あーめんどくせえ。私は挨拶周りもそこそこにベランダに避難した。

「……はあ、まじ鬱ー」
「そんなに退屈でしたか?」
「!!?」

振り返るとグラスを2つ持ったレギュラス様が困ったように笑っていらした。ど、どうしよう!?

「すいません…!私ったら、はしたないですわ」
「素直でいいと思いますよ。正直僕も少し、飽きてきたところですから」

驚いて目を見開くとクスリと笑って手の内にあるグラスを渡してくれた。……あ、もしかしてコレを渡してくれる為に来てくれたの?

「あの…これは私の為に?」
「そうです。静かにゆっくり飲みましょうよ」

なんて優しいお方なんだろう。私は凄く嬉しくて頬がゆるゆると笑みを止められなかった。レギュラス様も私の話を聞いてくれ、沢山お話してくださった。でも本当は気付いてた、どんなに笑っているときも、偉い方とさっき挨拶しているときも、私の目の前にいる彼は、自分を隠し目は笑ってない。思いきって尋ねてみることにした。

「貴方は、なんで私なんかに構ってくれたのですか?」
「美々さんの事が気に入ったんです」

嘘だ。それでも頬の赤みがおさまらない。ニコリと笑ってレギュラス様は身を乗り出してきた。頬を掠める柔らかい感触。耳元が吐息で震えた。

「なんて言ったら、どうしますか?」







策士め…!ここが彼の屋敷でのパーティーでなかったらそう罵倒してやりたかった。でも私は最大限のイイコを演じ、そして彼にときめいた事を隠すようにしなければならない。はあ、と溜め息が思わず出てしまった。頬が、熱い。