ムウの聖衣の修復作業を見ていた私は外の穏やかな天気に目を細めた。…もう、春なんだあ。ぽかぽかとお日さまは温かく、草木は芽生え、生命が生き生きとしている。小宇宙も温かみのあるように感じられる。作業場の窓の傍に置いてあるソファに身体を沈め、丸まるように陽射しを浴びた。ふあ、温か、い…。眠いけど目を擦ってムウの紫を見つめた。大好きな人の背中を見ているだけで幸せなんて、戦いの時には思ってもみなかった。この平和が今では物凄く、嬉しい。ムウはいつもの黄金聖衣ではなく、ジャミールの時に着ていた服で身を包んでいる。髪は作業しやすいようにさっき私が緩く下の方で結んであげた。……嗚呼もうだめ、ねむ……い…。


「全く、星矢たちの聖衣の損傷はいつも激しいから直すのが大変ですね…。待たせました美々、終わりました…よ…」
「…ん…、……」

振り返ったムウが見たものはソファに寝そべり幸せそうな顔で寝ている美々だった。その微笑ましい光景にムウは笑みを浮かべた。

「おやおや…私がこんなに頑張っていたのに貴女は呑気にお昼寝ですか」

良いことを思い付いた、と貴鬼には見せられないような意地悪そうな笑みを張り付けると美々が寝そべるソファの所に腰を下ろした。両腕をついてじーーっと美々を見つめる。むにゃむにゃと言葉にならないくらいの寝言が口の中で呟かれているようだ。じっくりと寝顔を堪能した後、少しだけ身を乗り出して髪のすき間から覗き出ていた白い耳たぶをぱくり、とくわえた。流石の美々も耳元の痺れに驚いて飛び起きようとしたが身体はガッチリとムウが押さえている。甘噛みを続けるムウの胸元をぺしぺし叩くもチラリと意地悪そうに笑う瞳しか寄越してくれない。喘ぎのような厭らしい声が意識に反して口から零れるのを美々は止められなかった。最後にはむ、とくわえられてからぺろりと舐めあげ漸くムウは身体を起こした。慌てて耳元をばちっと押さえながら身を起こす美々。顔は真っ赤だ。

「むっ、ムムムウ!」
「寝ていた美々がイケナイんですよ?」

隙をついて今度は反対側も音を立てて吸い付くと背筋がピシッと伸びた。

「りょ、両方しなくたって…!」
「嗚呼、あまりに甘そうな耳たぶでしたので」

楽しそうに告げると溜め息をついて「もうなんでこんな鬼畜なんだ…」とぼやいていた。しかしもっともっとと背中に手を伸ばしてきたのは美々、貴女からなんですよ?さて、貴鬼が帰ってくるまでまだ時間はある。これからどうやって頂きましょうか。ムウはにっこりと微笑んでから唇を合わせた。