艶やかな柔らかい茶色の髪を持った彼は宮殿の中でも一際優美で際立った存在であります。美しい上に優秀でカーティス家の彼に近付こうとする貴族のご令嬢や軍の女性たちは必死であるそうです。中でも第三師団に入ろうとする女性兵士は多く、また第三師団の女性を妬む兵士も多いと聞きます。私は運悪く第三師団に所属、副師団長にこの前任命されました。………本当にいい加減にして欲しいです。ただでさえ妬む女からの攻撃はあるのにカーティス大佐直々の昇格は男からも疎まれる原因になり、仕事に支障が出ますから。普通の兵とは少しデザインと色の違う軍服は副師団長だと主張しているようなもの、攻撃対象になりやすいのも悩みの種でした。

「雨音中佐、この書類を第一師団長に。それから陛下にこの前の調査結果の報告を…嗚呼それに将軍に次回調査隊についての提案をお願いしますね」
「………」
「中佐?」
「分かりましたカーティス大佐。後この書類全て宜しくお願いします」

私は沢山の書類を頂いたお礼に自分で片付けてあげようと思っていた書類を大佐の机にドンと置きました。予想を超えた量に目をぱちくりとさせた大佐は見物なものでした。

「驚きましたね…。こんなに書類があるなんて」
「嫉妬深い方々がわざわざ第三師団にと回してきた結果です。それでは失礼します」
「まぁ、多少の弊害は出ましたが優秀で私のお気に入りを手に入れる事が出来たんですし我慢しましょう」

………お気に入り?振り返ると両手を顔の前で組んでにっこりと微笑む大佐がいました。後ろの窓からの陽光が彼を皮肉な程美しくさせます。頬が意識に反して熱くなりました。

「っ、失礼します!」
「嗚呼待ちなさい」
「…なんですか、カーティス大佐」

そのままの笑みを浮かべたまま彼は立ち上がり私の目の前まできました。

「この部屋に帰ってくるまで猶予を与えます。だから私の事はジェイドと呼びなさい、いいですね美々?」
「え、大、佐…?」

有無を言わせぬ彼に私はすぐに執務室には帰れないとため息をついたのでした。