「おっ、久しぶりだな美々!」
「お久しぶりでございます、ピオニー陛下」
「他人行儀だなあ。昔みたいにピオ君、でいいんだぞ?」
「そ、そんな昔の事を…!」

恥ずかしい、一国の王となる方に恐れ多くもピオ君、なんて呼んでいたなんて…。しかし陛下は今の私の態度が気に食わないらしい。

「ほら、今なら誰も居ないだろ?せめて敬語は止めてくれよ」
「そ、そんな…私はただの軍人ですよ?!」
「そんなに言うなら俺にも考えがある。この可愛い美々の写真をバラまい――「わわわわ分かった!分かったからそれは止めてピオニー!!!!!」分かればいいんだよ」

にんまりと笑ってその写真…子供の私とピオニーが手を繋いでピースしている写真を大事そうにしまった。ここで立ち話もあれなので、私たちは陛下の私室のテラスでお茶をすることにした。ミルクティーとクッキーの甘い香りが鼻先を擽る。

「そういえば今までは駐屯してたんだよな?」
「元帥の所でお世話になってたの。譜術の方も見てもらったりね」
「ジェイドの師匠だもんな、確かに習って損はないな」

笑みを浮かべて陶器のカップを持つ彼、午後の温かな光がピオニーの黄金の髪を更に際立たせていた。思わず――

「素敵な金髪…」
「ん?どうしたんだ急に」
「え、あ…嫌だ、今声に出してた?」

やっば、と手を口元に当てて笑う。美々は自分のロングの髪を一房摘んだ。

「ピオニーやジェイド、ネフリーは素敵な髪色よね…太陽のように輝く金髪、甘いミルクティーのような茶髪…。それに比べて私は真っ黒…どぶのような色だもの」
「……昔、珍しい色だから結構言われてたよな…」

顔をしかめてピオニーは自分の髪をそっと見た。……たしかに自分やジェイドのような髪色はこの世界には多い、だが美々のような漆黒は余り聞いたことがない。たしか、キムラスカのナタリア殿下の母親は黒髪と聞いたが…。不吉な色、と蔑む人が居ないわけでもない。

「――俺は好きだぞ、その髪」
「え、?」

突然立ち上がり、そんな言葉を言ったピオニーに美々は戸惑った。

「夜を包み込むような闇の色…綺麗だよ」

そう言って美々の目の前に行き、一房の髪を取りそっと唇を落とした。パッションフルーツの様な香りがする美々の髪は太陽に照らされ艶やかに光っていた。

「ぴっ、ピオニー!??」
「…………なーんてな!でもその髪色、お前には似合うよ美々!」

か、からかったのね!と赤くなり怒る美々を見て笑ってしまった。…俺、結構本気だったんだけどなあ。淡い思いは、まだまだ伝わりそうにない。ピオニーの憂いは続きそうだった。





私、これ以上意識しないようにできないじゃない!