サラサラと羊皮紙に何かを書き込み続けるヴォルデモート卿はどんなに美々が後ろのベッドでゴロゴロしていても、暇だ暇だと呟いてみても、お菓子をボリボリ食べてみても、チラリと一瞬だけ見てまた作業を再開させるのだった。ちょいちょい、と真っ黒なローブを引っ張っても「後にしろ」とだけ言われる。外に出ようとすると杖から失神呪文が放たれる。………ほんと、この人何がしたいんだろ。私にぜーんっぜん構ってくれないのに!!!

「あーもう夕方になっちゃったよ…。買い物、行きたかったな」
「…………」

ようやくカタリと羽ペンを置く音がした。ベッドにだらんとねっころがっている美々はごろごろ移動してヴォルデモートが見えるようにする。溜め息をつきながら彼は長い髪をかきあげ……あ。美々は前髪の影になって見えなかったヴォルデモートの目の下の隈がはっきり見えてびっくりした。……仕事、本当に大変なんだ。私はベッドの頭元まで移動して上半身を起こす。ぽんぽんと自分の太股を叩く。

「ヴォルー、ほら。おいでよ」
「美々…」

私が示したいことが分かったのか、恐る恐るという感じでベッドに乗ってきて静かに頭を私の腿に乗っけた。う、わ…綺麗な髪!女の私より美しいんですけど?!同じシャンプー使ってるのに…っ。これがあれか!元がいいって奴か!梳くようにして髪を撫でつけると猫のように目を細めた。気持ち良さそうに頭を押し付けてくるヴォルデモートの滅多に見れない甘えに思わずきゅーんとなってしまった。

「お疲れ様」

前髪を弄んでいた私はそっと白いそこにキスを落とした。ここにキスできるのは、私の特権だもんね。気恥ずかしさを紛らわすため前髪を元に戻して私は自分もそのまま瞳を閉じた。