「―…話を要約すると、ダアトからの脱走の際に助けてもらったのが漆黒の翼だったんですね」

「ダアトからグランコクマって遠いでしょう?お手伝いしなが…ってジェイド!?私盗賊じゃないからね、そっちの仕事はしてないからね!」


とある船室に引っ張られていった私は、けちょんけちょんになるまで擽られた。もう喉が張り裂けそうなくらい声を出して笑った。うっ………身体に力が入らない…。ジェイドを敵に回さない方がいいって今更ながら思った。そんな私をよいしょと抱き起こしてジェイドは自分の身体に寄り掛からせた。私たちは隣同士座ってる状態になった。


「大丈夫ですよジェイド、クロエは嘘を言っているようには見えません」

「イオン…っ!」


「それにクロエにそんなまね事できませんよ」

「い、イオンんんん!?」


にこやかに口を開いてイオンが言った言葉に私は倒れそうになった。ジェイドに尋問という名の痴漢にあってる時にイオンがアニスを連れて入ってきて私の話を聞いていたのだ。優しい言葉をかけてくれたと思ったら、イオンはやっぱり黒かった。


「たしかにそうですね」

「じぇ、ジェイドさんまでぇえぇえっ」



私の立場って一体…。アニスが笑っていた。ちくしょう!憎々しくジェイドたちを睨んでいるとドアをノックする音がして1人の兵士が入ってきた。


「師団長、もうじきエンゲーブに到着します」

「ご苦労。警戒は怠るな」


兵士が出ていき私たちは真面目な顔つきになった。とうとう、である。物語が始まる。ジェイドは昨日の第七音素の収束についての報告書をイオンに見せてこれからの動きを再確認した。


「イオン様、これからは何が起こるか分かりません。十分注意して下さい」

「分かりました…」




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