ノエルの操縦により私たちはアルビオールで魔界へと向かった。崩落したところから入り、ひたすら下へ向かう。障気の中に光の灯る場所が見えてきた。思わず握った手をさらに力強く握った。


人工的な光しかない魔界監視者の街、ユリアシティ。預言は――狂った。その一言で会議は始まった。テオドーロは目を閉ざしたまま指を組み合わせ考えに耽った。後ろには監視者の街の人々が控えている。長い机を挟んでルークたちは対峙した。ティアが一歩前に進み出る。


「お祖父様、外殻で起きていることはご存知ですね。率直に聞きます…外殻大地を救う方法は?」


決意を秘めたティアの瞳を真っ正面から受け止め、テオドーロは口を開いた。


「――残念ながら崩壊をはじめた大地を再浮上させることは不可能だ。…だが魔界へと降ろすことならば――あるいは!」

「そ、そんなことができるのですか!?」

「理論上は可能だ。大地を支えているセフィロトの力を少しずつ弱め…魔界の泥の海へと軟着陸したところで停止させればいい」


ぱっとルークたちの顔が輝いた。兆しが見えたから。


「…だが非常に精密で困難な作業だ…。大地のように巨大なものを無事に降下させるのだからな。そして何よりひとつ大きな問題がある」


喜びが一気に静まる。不安そうにルークがテオドーロの顔を見つめた。


「セフィロトを制御するための装置、パッセージリングは誰にでも扱えるものではない」

「え?」

「第七音素よ」

「再来様のおっしゃる通り、第七音素を使わないと全てのパッセージリングの操作盤は動かない!」


その言葉にルークは拳を握る。…大丈夫、だって――


「…それなら!ここにその使い手が4人もいるぜ?」


ルークとティアにナタリア、それに私だった。会議はひとまず終わり、ノエルがアルビオールを整備する間、少しだけ時間があった。私は勿論テオドーロに呼び止められさっきの会議室に1対多数で向かい合っていた。さっきまでは普通に対峙できたが今では震えないようにすることで精一杯だった。自分が仲間に頼っている証拠ではないか。心で叱咤する。


「ユリアの再来クロエ様よ、もうこんなお戯れはよしてユリアシティに腰を落ち着けてはどうですか?」

「そう呼ばないでいただきたい市長。私はただのクロエ・アマネ、ユリア・ジュエの代用品ではない!」

「ですが貴女はユリアの力を持つ者、これからルークさんたちが赴くような危険な場所へと行かれては困るのです」


まだ預言に頼るような言葉を並べ立てるテオドーロにクロエは苛々した。だから、ここには来たくなかったのだ。ここの人間は私を見てくれていないから。


「あなたからの指図は受けない。それに、ルークたちのために力を使ったほうがまだマシだ」

もう話すことはない、そう思い扉へと向かう。


「貴女はまだ、引きずっていられるのか?」

「――まだだと?誰がこのようにしたのだ!驕り高ぶるのも大概にしろ!」


身体が怒りに反応して音素をぶっ飛ばす。無意識だが風が会議室を暴れる。後ろにいた街人たちはあわてふためく。そんな力のない彼らを置いて去ろうとするがテオドーロの言葉が追い打ちをかける


「本来なら貴女のような存在はありえないのです。この意味をお忘れにならないように…ユリアの再来、クロエ様よ」


まるで、嘲笑っているかのようだった。テオドーロの言葉を理解できるのは、きっと私だけだろう。彼も真の意味は分かってないかもしれない。では彼はなぜ、私がイレギュラーな存在だという言葉を発したのだろうか。…どうせ預言、だろう。ここでも預言か。預言が蔓延る世界、この世界を変えたいと思う。だが、力も方法も分からない。それをヴァンは手に入れた。…少し先だがルークたちも手に入れる。私が居なくても進む物語。私はそこでの私の存在価値を見出ださねばならない。とんよりとした雲しかない空を見上げ、私は自分を呪う。なんで、ここに今居るのだろうか。…ねえ、エミリオ。君なら今の私を鼻で笑うのだろうね。でも、少し辛いんだ。助けることは難しいんだ。




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -