ピオニーは急に真面目な態度に変えた。本格的な話、のようだ。


「アクゼリュスの崩落以来俺も調査は進めさせていた。たしかに各地で地盤沈下が起きているという情報がある。現在わかっているだけでもルグニカ平野の一帯、近隣に位置するエンゲーブ、カイツール、そしてアベリア大陸のケセドニア…」

「エンゲーブ!カイツールも!?まさか…師匠が!!」
「ケセドニアといえば両国の国境の大流通拠点ですわ!!」


こくりと頷き憂いを含んだ表情でピオニーは先を進めた。ふとミュウを見ると悲しそうに耳をしなだれていた。エンゲーブは彼の森の近く、だから仲間の事が気になるのだろう。


「外殻大地や魔界のことはジェイドから聞いた。にわかには信じがたい話ではあるが――この世界で今たしかに大きな異変が起きている…とても恐ろしい異変が」


ルークを見遣ると難しいことを考えているのか怖い顔をして下を向いていた。


「…まるでいたちごっこだな。住民を避難させ続けたとしてもこのまま大地がメチャクチャになっては…」

ガイの言葉にティアは1つの結論を出したようだ。


「魔界へ行きましょう、もう一度。対処法を知っている人がいるとするなら――私の祖父テオドーロだけだわ!」

「ふむ、当面の行動は決まったな…。おまえさんたちには大層な責務を押し付けることになっちまいそうだ、俺も俺にできることをするとしよう」
「ピオニー陛下…!」

「ここにマルクト皇帝ピオニー九世が停戦を提案する!ただちに議会を招集しろ!」


ティアは選択した。ピオニーも選択した。ルークたちも…きっと。だから私もしなくてはならない。私は、一体どうすればいいのだろうか。これからの事も細かくは覚えていない。でも助けたい、世界を、ルークを、アッシュを、六神将を、人々を。暗い顔をしていた私をジェイドが小突いた。ハッとして顔をあげるとピオニーがルークと握手している所だった。そのままヒラヒラと手を振るピオニー。ふと振り返る。


「そうだ、クロエとジェイドは後で俺の部屋に、な!」

「分かり、ました…」


「ああそれとジェイド、今度サフィールに会ったらちゃんとかまってやれよ、今頃泣きべそをかいてるぞ」
「これ以上の子守はごめんですよ」


間一髪応えるジェイド、相当ディストが嫌らしい。…たしかに。笑いながらピオニーな会議の為に謁見の間から出ていった。


***


「全くいつもお前は俺とジェイドを心配させやがって!今回は本当にヒヤヒヤしたんだからな」
「ご、ごめ――」
「それに加えジェイドと一緒ならまだしも行方不明!?一体何処で何をしていたんだ!!!」

マシンガントークの中私は縮こまっているしかできなかった。ピオニーの隣でジェイドもうんうんと頷いている。くそっ、こんな時に限って仲良しじゃねーかこんちきしょー。


「白状しなさい、ほらルークたちも待たせているのですよ」


ブウサギと一緒に。


「………ジェイド、貴方は私にいくつか疑問があるよね」

「ええ沢山…、まずはその服、レイピア、ヴァンから逃げる際に切ってショートのはずなのに数日で伸びる長さではない、などですが1番気になったのは…」


貴女の性格の変わり様です。しっかり分かっているようだ。私は微笑んだ。


「私、異世界に居たんです。…って言ったら信じてくれますか?」




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