ヒールが効いてきたのか顔色が良くなったクロエは無言で立ち上がり、1人で何処かに行こうとした。慌ててルークが肩を掴んで止めさせる。


「おいクロエ!何処行くんだよ?!」

「……1人になれるところ」

「私たちと一緒に行かないの?ナタリアやガイ、イオン様も貴女のことを心配してたのよ」


ティアの言葉にアニスも賛同の声をあげたが、クロエの首は横を振るだけ。そんなクロエに一同少し違和感を感じた。そう、あの時と同じ、ルークが変わると言ってすぐと。急な心の入れ代わりで自分たちが着いていけなかったのだ。クロエにも同じ、何かが違うのだ。そういえば自分たちはクロエを疑っていたのだ、彼女からしたら虫のいい話なのだろう。アニスも思い出したのか苦い顔をしていた。冷静にジェイドは口を開いた。


「貴女を疑っていたことは謝ります。ですがどうしたのですかクロエ?まるで…」

「他人みたい、ですか?なら他人を突き通して下さい…。私にはしなければならないことがあるんです」

「え…クロエ、まだ怒ってるの…?アニスちゃん謝るから一緒に行こうよ〜」

「……ごめんなさい。たしかに勝手ね、とりあえずナタリアやガイ、イオン様には会います」


その言葉にジェイドは顔をしかめた。とりあえず、ということは後には解散するという意思の表れなのだろう。スタスタと操縦席の方へ向かうクロエをメンバーは慌てて追った。


***



「まあクロエ!無事でしたのね!!」

「みんな心配してたんだぞ?君が生きていて良かったよ」

「……えぇ」


冷淡な返答に2人は首をかしげた。気になるのはそれだけではなかった。服装のことである。慰問などで各地を訪れるナタリアですら見たことのない服である、それに男物らしい代物…。


「クロエ…この1、2週間で一体貴女を変えたのは何なんでしょうか…」

「(言えるわけない…異世界に居たなんて)…なんでもないよ、イオン」

「ですが…あまりに違いすぎます」


悲しそうに俯くイオンにクロエも一瞬だけ顔を歪ませたが、すぐに無表情に戻ってしまった。ギクシャクとした空気の中、動いたのはルークだった。


「と、とにかく生きててよかったなクロエ!」
「そ、そうね…。ところでクロエ、そのレイピアはどうしたの?」


ティアは旅の当初には彼女の腰に無かった細身の剣を指差した。ぴくりと反応したクロエはただ「貰った」とだけ答えた。赤い宝玉がついたそれは上品な美しさを放っており、装飾からして高価なものだとうかがえた。そんなものを…貰った?疑問が沸々と浮かんできたが、とりあえずジェイドは質問をするべく前に出た。


「服や剣のことはまた後ほど聞くとします。…貴女は私とルークを助けましたね?」

「…術の上乗せなら、しました」

「そうですか…。そのおかげでディストの譜業ロボットをほぼ壊す事ができました、感謝します」


珍しいジェイドの言葉に全員びっくりしてジェイドの顔を凝視した。中でもクロエは口をポカンと開けたまま固まってしまった。暫くしてからそのことから復活し頬を少しだけ赤く染めたクロエはふいっとそっぽを向いてしまった。


「これからグランコクマの陛下と謁見します。…クロエ、貴女も来ますよね?」

「……拒否したら気絶させてでも連れて行きますよね」


ため息をついたクロエに勿論と弾むように言うジェイドの周りでまたため息の数が増えた。ノエルに頼まれもうすぐグランコクマだと告げにきた少女はこの不思議な空気に首を傾げたとか。



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