2、3日経ってから治癒術が効いたのか身体を動かせるまでになった。おばあさんと家事や洗濯、買い物まで付き合えるようになるのにそれから数日もかからなかった。


「助かるよクロエ、こっから避難するときにゃどうしようかと思ったけど…」

「…大丈夫だよ、きっと救助隊が来るから」


食料を抱え直して足を家に向ける。途中で長老と将軍が物凄い剣幕で言い争っている横を通過した。地盤沈下の為民間人を避難させるのに兵をどーのこーの…。彼ら親子のこんな喧嘩は日常茶飯事らしい。私たちは笑いながら帰路に着いた。早めにこの街を出ないと此処は崩落してしまうから。


「…こんなもんでいいね」

「うん、兵士さんから何か連絡があったらすぐに街を離れよう」


知り合いがシェリダンに居るらしい。おばあさんはどうやらめ組でお世話になってたらしくそのつてに頼るようだ。荷物を纏めて休憩しようとお茶にしようとした瞬間にグラリと辺りが揺れた。―――地震!しかも大きい…っ。これは危ない、避難しなきゃ!!


「街を出ようおばあさん!」

「あ、あぁ…」


急すぎる避難に呆然としたおばあさんを建たせてから扉の近くに置いてあった鞄を引っつかんで外に出るとパニックに陥る人々で溢れ返っていた。泣き喚く子供、揺れで崩れてきた瓦礫で怪我をした者――ごった返しだった。兵士が誘導を試みるもパニックした人々は中々動こうとはできなかった。すると向こうから聞き覚えのある声が聞こえた。


「自力で動けない方はこちらに!アルビオールで安全な地に運びますわ!!」

「動ける奴は荷支度をして街の外に行ってくれ!駐留軍が誘導してくれるぞ!」


…ナタリア、ガイ。まだ、会う勇気がない。私はおばあさんには申し訳ないがここから別行動することにした。


「おばあさん、先にアルビオールに行ってて。私は他の人たちを誘導してくる…」

「……気をつけるんだよ?あんたはまだ病み上がりなんだからね」

「……ありがと」


そしてさようなら。おばあさんの小さな背中をそっと見送ると私は兵士たちが誘導する街の外に向かおうとした。もう少し…!そんなところで入口の門に近いところが急にブッ壊れて大きな影がさした。瓦礫が飛んで周りの人にぶつかった。近くに倒れていた人の額から血が流れている…。手を翳して第七音素を集める。


「大丈夫ですか!?―…ヒール」

「うっ…すまねぇな嬢ちゃん」

慌てて走り出すおじさんの後を追おうと腰を上げると聞き覚えのある声がした。


「ついに見つけましたよ…ジェイド。魔界(クリフォト)は楽しかったですか…!?」

「…よりによってこの忙がしいときに…昔からあなたは空気が読めませんでしたよねぇ?」

「なんとでも言いなさい!!さあ…おとなしく導師イオンを渡してもらいましょうか!!?」

六神将のディストが攻撃をしかけたのは……ジェイドだった。私は突っ立ったまま動けなかった。思わぬ再会に、身体は順応してくれない。ジェイドたちはこちらに気付いていない。ジェイドはぶつぶつと何かを唱えながら手を突き出した。防御壁が現れ譜業ロボットの攻撃を防いだ。そのことにディストはお気に召さないように顔を歪めた。


「…ラルゴが譜術を封じたと聞きましたが思ったよりやるじゃないですか。さすがはジェイドですね。…なのに防御の譜術ですか?攻撃ではなく防御の譜術…後ろの虫ケラどもを気にしているんですか?虫ケラなんて助けてどうするんです…!?」


ジェイドはただディストを睨むだけ。向こうから異変に気付いたルークが走り寄ってきた。髪は短く1番嫌そうな救護を手助けしているようだった。……ルーク、変われたんだね。

「ネビリム先生のことは諦めたくせに…!!!」


その言葉に珍しくジェイドが目を見開かせた。顔を真っ青にして、怒りを押さえ付けているようにも思えた。そんな間にも揺れは治まるどころか酷くなるばかり。アクゼリュスの時と同じ現象のようだ。兵士たちも総員で街からの避難に切り替えた。泣き声や叫び声、騒がしさがさらに増した。しかし目の前の空間だけは切り離されたように別の空気を纏っていた。


「残念ですよジェイド。これがかつて死霊使い(ネクロマンサー)と恐れられたあなただとは…。もうすっかり忘れてしまったのですか…?私とともに研究に明け暮れた日々のことも――ネビリム先生のことも!!」

「おまえは…まだそんな馬鹿なことを!!」

「今のあなたには言われたくはないですね…!!」


唇を噛み締め激昂するジェイドはなぜヴァンに協力しているのか問い詰めた。協力、という言葉が気に食わないのか鼻でディストは嗤った。


「ただ都合がいいだけですよ。総長のレプリカ情報保管計画はね!」

「レプリカ…保管計画…!?」

「おまえたち…いったい何を!!」

「おしゃべりはここまでです。さあ導師を出してもらいましょうか!?」


譜業ロボットが暴れ出した。慌てて避けるルークとジェイド。ディストは狂ったように笑っていた。2人はどうやらディストを城門から引き離すように走り出した。街の人たちの安全を優先するらしい。私はまだ、会いたくはない。けどこのまま見過ごすわけにもいかない。だから見晴らしのいい建物に上がり援護することにした。ジェイドもそうらしく少し遠い所に居るようだ。バレないように術を展開して街の人を避難させる。ディストはルークに標的を定めて攻撃をしかけた。するとジェイドから凄い力が発せられるのを感じた。私も同じ術を発動させる――


「フリジット・コフィン!!」
「フリジット・コフィン!!」

すぐさまロボットが壊れた。ルークはあまりの術の凄さに呆けているかのように座り込んだ。ジェイドが私の存在に気付いたのかこちらを振り向いた。…!慌ててその場を飛び降りて疾走した。ちょうどアルビオールの入口にはティアやガイ、ナタリアたちも居ない。丁度いいと思い中に乗り込んだ。アルビオールの1番後ろ、余り人も寄らなさそうな積み荷置場に腰を下ろした。


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