ふわふわと漂っているようだった。それは深い心の痛みを和らげてくれるようだった。それでもキリキリと私の中で暴れ回る感情が、休まることを赦してはくれない。忘れる事を、赦すはずがない。この罪は忘れてはいけないのだ。もがき苦しむ私は暗闇の中を進み続けた。ようやく遠くの方に小さな光が見えた。暗いからよく見えないが、手を伸ばしてみた。





















――…ん、――ちゃん、おじょ…――、……お嬢ちゃん―


誰かが呼びかけてくる。うっすらと目を開けるとおばあさんが心配そうにこちらを覗き込んでいた。私の意識が戻ったことにホッとしたのかガタンと大きな音を立てて椅子に座った。


「全く、老人を驚かせないでおくれ。あんた、アクゼリュスからの道にぶっ倒れてたんだよ?崩壊から逃げてきたんたねぇ」

「…崩壊…アクゼリュス…。ここは…」

「セントビナーだよ」


私はエミリオから逃げてきたようにオールドラントに戻ってきたようだ。あんなに帰りたかったのに、感動はこれっぽっちもない。動かしづらい身体をどうにか起こすと辺りを見渡した。どうやら一般的と思われる家のベッドに私は居るようだった。


「服はこっちで繕っとくよ。治るまではうちにいていいからね」

「私治療術使えるんで、すぐ治りますから…」

「…あんた、だいぶ血を流してたんだよ?第七音素は血までも増やしてくれないだろ」


呆れ顔で笑い飛ばしてから、おばあさんはお粥を持ってくると言って部屋を出ていった。一瞬にして静かになる部屋に嫌でも身体が震えてしまう。……今、いつ?皆は何処にいるの?まだ私を信用してないの?切ってから少し伸びた髪が肩先で揺れた。……こんなに伸びる程私、向こうでのうのうと暮らしてたんだ。否ほんとはこっちでは1日、数時間、もしくは数分しか経ってないのかもしれない。とにかく情報が欲しい。

おばあさんが運んできてくれたお粥を食べながら今のオールドラントの状況を尋ねた。


「アクゼリュスが落ちて数日だよ。…まだそこだけしか落ちてないけど…危ない気がしてねぇ…」

「そうなんですか…。私、もう少しだけお世話になってもいいですか?」

「もちろん、好きなだけ居ておくれ」


おばあさんの優しさに少し、ほんの少しだけ心が落ち着いた。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -