「お久しぶりですクロエ。ダアトから脱走してからですから3年ぶりですかね」

「…イオンっ!黒いけどお久しぶりーっ!」


私がぎゅうぅうっと抱きしめて漸くイオンの機嫌が直った。顎の下を柔らかいイオンの髪がくすぐる。小さな身体をおもいっきり抱きしめてから私は腕の力を緩めt「まだ、ぎゅーですよね?」

「……は、い」

「ある意味凄い2人ぃ、ですよねぇ〜たーいさっ!」

「イオン様はともかく、これがクロエの唯一の取り柄ですからぁ」


4人の間に沈黙が流れた。



イオンを大詠師モースの魔の手…いや、豚の手からタルタロスまで連れていく作戦は成功した。後はキムラスカ・ランバルディア王国の国境付近から歩きで王都まで行くのみ。そう思っていた。


偶然にも親書を確認したジェイドが顔色を変えて珍しく悲鳴をあげた。親書だと言われてピオニー陛下に手渡されたモノは、私へのラブレターだった。イオンがそれを読んだ途端に破り裂いた。アニスが更に細かく砕いた。ジェイドがイラプションで焼き払った。


「……」

「……」

「……」

「さぁ、エンゲーブに行きますか」


そこに本物の親書が来るらしい。なんとも言えない沈黙が私たちを包んだ。…この旅、今からめちゃくちゃ不安なんですけど…っ!そんな不安を余所にタルタロスはエンゲーブへと方向転換した。


***



イオンは自分の部屋に戻って息をそっと吐いた。……あれで、よかったのでしょうか。僕は、僕だったのでしょうか。小さな肩を震わせてイオンは目を閉じた。彼女は騙したくない。でも悲しませたくないの方が大きい。僕は導師イオン、でなくてはいけないのだ。扉の外でアニスの呼ぶ声がして僕は腰をあげた。ぎゅっと首から下がる音叉を握り締める。大丈夫、きっと。




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