あの後私たちは奴らを拘束、兵士に報告して、それから近くの飛行竜を着地できそうな街に行って飛行竜を呼んでダリルジェイドに帰ってきた。反逆を起こした奴はらすぐさま引っ捕らえられて裁きを受けるそうだ。私はヒューゴに感謝され、城では是非とも将軍に仕えて欲しいとまで言われた。そして出発してから1週間ぶりに私は屋敷に帰ることができた。本当は前日には帰れた、でも王からの誘いなどを鄭重に断ったり、夕食という名のパーティーに無理やり出席させられたりしている間に夜になり、結局城に泊まったのだった。やっぱり豪勢なお屋敷だな、と思いながら入口の扉を開けると一瞬の静寂の後、わーっとメイドたちが駆け寄ってきた。


「お帰りなさいませクロエ様!」
「ご無事でなによりです」
「メイド一同クロエ様をお待ちしておりました」
「お怪我はないですか?」
「今日のお夕食はクロエ様のお好きなものにしますね」


私の安否を純粋に喜んでくれる彼女たちにお礼をいいつつ、昼食まで休憩をとるといって部屋に戻ることにした。部屋に着いて剣とレイピア、荷物を放り投げ自らの身体をベッドに沈めた。………疲れた。本当にあの譜術は。ヒューゴに見られてた事を帰りに思い出したが、もうどうでもいい。きっといつか、私はあっちに戻るのだから。それよりもこの脱力感をなんとかしなくちゃ。音素が足りていないようだ。前世、のような記憶は持っているが私の身体はオールドラントで生まれている。つまり音素で構成されているのだ。だから力の使いすぎは命を削ることを表しているのだ。


ふと向こうはどれくらい経ったのか、疑問に思った。時間の流れが違うのか、向こうの時間は止まっているのか…未知である。もし向こうに帰れたとしても原作が終わっているかもしれない。そんな終わりの見えない不安を抱えながらも疲労には勝てずに睡魔に身を委ねた。



***


「――…?クロエ…?」

「…んー、なん、じ…」

「もう4時よ。よっぽど疲れてたのね」


優しい懐かしい声に瞼を開けると黒い髪が目に入った。



「…………マリアン?」

「はい、おはようクロエ」


慌てて身体を起こすと窓からオレンジ色が部屋に零れるほど、太陽は傾いていた。…参ったな、エミリオ怒っちゃうかな。少し癖の付いてしまった頭をかきながら気まずそうにそっとマリアンの顔を伺った。するとふわりと優しい微笑みを浮かべてベッド脇にしゃがんで目線を同じ高さにした。


「この前はごめんなさい」

「……マリアンは悪くない。俺のせいだから気にしないで」

「そんなことないわ…現に今だって気まずい空気よ?私、クロエとこんな関係でうじうじしていたくないわ」


マリアンはこういう友人関係には積極的なようだ。たしかに、メイドは大変で自分の時間も少なく、肉体的にも精神的にもキツい仕事である。人間関係も色々あるのだろう、………女ばかりの職は。


「……私…、ごめんなさい」

「おあいこね?ほら、もうすぐ夕食よ。シャワー浴びたりしてきたら?」

「あー…うんそうするね」


私の頭を撫でてからマリアンはにこっと微笑んでよいしょと立ち上がった。


「エミリオもクロエの帰りを今かと待っていたのよ!ご飯前にでも会ってあげてね」


そう言って部屋から出ていった。……………仲直り、ってか。甘いよマリアン。


「さーて、坊ちゃんのところにでもいきますか…」




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