それから3回宿で泊まってから目的地周辺へと辿り着いた。周りに生える草木もダリルシェイドとは少し違う。視野の奥には遺跡と思われる建築物も見えた。ようやく半分かとホッとしていると、私と馬車以外の護衛たちからの殺気がした。慌てて馬から飛び降りて剣を構えると彼らは各々の武器を片手にニヤニヤと笑っていた。
「ヒューゴさんよ、護衛はここで終わらせてもらうよ」
「ついでに金目のものも置いてってもらおうか!」
ぎひひと下品に笑う奴らに吐き気がする。ヒューゴが馬車から下りて普通より太めの剣を携えて出てきた。
「ヒューゴ様は馬車から離れないで下さい」
「そんな女みてーにひょろっちい奴に何がぐわっ!」
そいつは最後まで言葉を発する事ができなかった。その前に絶命したからだ。あまりの早さに呆気に取られていた他の護衛たちは自分たちは厄介な奴を敵に回した、しかし一対多数ならこちらが有利。それを一瞬で頭の中で弾き出すとクロエ目掛けて襲いかかってきた。実力はさすが、護衛に選ばれただけであって中々手強い。この世界に来てから久しぶりに人やモンスターに刃を使う私にとってはキツかった。ましてや私は女、男の力技には敵わない。10人をようやく切り付けて大きく息をしながら辺りを伺った。まだ半分しか倒してない。……………もう、1発で決めるしかない。背中で庇っていたヒューゴに一瞬触れて味方識別をつける。それから剣を天へと向けた。…ユリアの再来と異邦人、どっちにしよう。まぁ、どっちでもイケるか。
「―――旋律の戒めよ、異邦人の名において具現せよ!――」
「な、なんでこいつ晶術を…っ!」
「や、ヤバいぞ!」
「ミスティックケージ!」
言葉通り一瞬で終わった。ヒューゴは激しい音と光の後につむっていた目を開くと屍のように動かない元護衛たちの中に1人立つ美しい女のような男に視線を注いだ。
「…力というものを、思い知りなさい」
……あいつはもしかしたら、使える。否しかし、逆にエミリオより動かしづらいかもしれない。そ れ な ら い て も ら っ て は 困 る な 。
「さて、どうしてくれようかな?」
私は無表情で剣を男の喉先に突き立てた。