次の日私はヒューゴに呼ばれて彼の部屋に向かった。初めて入るその部屋は、たくさんの資料と本、貴重品で埋め尽くされていた。机に向かって何やら書きながらヒューゴは私に目もくれずに話し出した。


「今度発掘調査に行く所はモンスターが狂暴化しているらしい。君には護衛としてきてもらう」

「分かりました。いつ出発ですか?」

「明日だ」


急すぎるだろ。………まあ、マリアンと気まずかったし丁度いいか。部屋から出て考えながら歩くと部屋の入口にエミリオが突っ立ってた。私が来るのを見ると小さい身体を最大限に利用して私の向こう脛を蹴飛ばしてきた。


「い"っ!たー…何すんのエミリオ」

「クロエのせいでマリアンが泣いたんだぞ!」

『坊ちゃん!僕たちが口を挟んじゃいけないですよ…!』


どうやらあの後、マリアンは泣いていたらしい。それを見たエミリオは私のせいと決め付けたようだ。否私のせいだけどさ、勝手に泣かれてもなあ。じんじんと痛い左脛を労りながらエミリオを見つめた。


「エミリオ、わ…俺は明日からヒューゴ様の護衛につくから何日か自主練しててくれ」

「…えっ…、ヒューゴ、様の護衛……?」


信じられないものを見るような目でエミリオはこっちを凝視した。あ、れ………。口を開こうとしたら急に駆け出して私がさっき歩いてきた廊下を辿るように向かっていった。…あっち、ヒューゴの部屋しかない気がするけど。まさか、ねぇ。渇いた笑い声をあげてみた。………………。切なっ。とりあえずエミリオを待ってみることにした。数分後すぐにエミリオは戻ってきた。だいぶ肩を落として暗い顔をして。


「え、エミリオ!?どうしたんだ」

「ヒューゴ様にクロエの護衛役を外してくれと頼んだけど…」

「駄目だって跳ね退けられたのか…」

『びっくりしましたよ〜。あんなに必死な坊ちゃんなんて…ごめんなさい坊ちゃんお願いですからコアをグリグリしないでくださいヒビがぁあぁあ!』


叫ぶ煩いソーディアンなんて、気にしてられなかった。………エミリオが、私の傍を離れたくないってこと…?剣の修行のため、って知ってるけど、だからって嬉しい。いつの間にか頬が緩んでいたのだろうか、エミリオが私の顔を見て固まった。


「………クロエ?」

「ん?嗚呼そろそろ時間か?今日は晶術も交ぜて練習するぞ」
ひらひらと手を振って先に階段を降りていくクロエをただ見つめるエミリオ。その背中が見えなくなった途端にへろへろとその場に座り込んでしまった。

『……今のクロエの笑顔、可
愛かったですね』


エミリオはいつもより熱い頬を冷やそうとした。シャルの言う通り、クロエが自然と零した笑みは破壊的だった。………なんだかこの頃、クロエに振り回されている気がする。ハァとため息をついてからもう待っている師匠と呼べる存在の元へと行くために階段を降りはじめた。


「そういえば、何か忘れているような…」

『奇遇ですね坊ちゃん、僕も同じこと…あ、』

「どうしたんだシャル」

『………マリアンの話、忘れてました』


そうだ、と再び闘志を燃やしたエミリオだった。それから2時間はエミリオの無言の積極的な攻撃に若干の恐さと疲れを募らせたクロエがいたらしい。




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