すぐ次の日には私の髪型は整えられた。肩につくくらいの髪が暖かい風に揺れた。マリアンに頼んでこの世界の文字について勉強できる本を借りて、こっそり読み書きの訓練をした。なんとか2日程で読めるようにはなった。ふと窓際に置いてある机に向かっていた私は窓を開けて外を眺めた。洗濯物を干してるマリアンと、シャルを抱えながらそのマリアンと楽しそうに話をするエミリオ。微笑ましい光景だった。でも、私の目から見ればそれはモノクロで、味気無い風景。


「ほんとになんで、ここに来たんだろ…」


ぼやきが風に乗っていく。視線に気付いたのかエミリオがこちらを向いた。見られていた少し堅い表情で睨まれた。マリアンもそれに気付いて上を向き私に気付くと手を振ってくれた。手を振り返すと私は窓を閉めた。あまり、あの光景を見たくない。沈む私の元にコンコンと扉が叩かれ中に誰かが入ってきた。――ヒューゴだった。


「やぁクロエ君、エミリオの力はどうかね?」

「とてもお強いですよ。センスもあるので、直ぐにダリルジェイド一強くなるでしょう…」


そうかそうかとニヤニヤと笑いながらヒューゴはぽんぽんと拍手をした。


「これからも頼むぞ」


「………はい」


肩に手を置かれてヒューゴは私をじっと見てから部屋を去っていった。物凄く見られた…凝視ってやつ?圧力が半端なかったな…。見透かされてるみたいでかなりドキドキしたよ。ふうと息を吐くとドタドタと誰かが走ってくる音がした。


「っクロエ!!」

「ど、どうしたの…?」

「今…ヒューゴ、様は…何しに来た?」


ハァハァと息を切らしているのを見ると慌ててきたらしい。実の息子にビクビクさせるなんて…天上王だからって許されることじゃあない。私は何もないとだけ言った。…………あ。


「…今、名前で呼んだ?」

「っ!!!うっ煩い!」


かあっと赤く染まったエミリオはくるりと後ろを向いてしまった。


「ほ、ほら早く外に出ろ!稽古の時間だ!」

「はいはい…」


私はふと机の上に見覚えのないレイピアが置いてあるのに気付いた。…綺麗なレイピア。赤いコアの様な宝石がちりばめられていて、繊細な装飾が持ち手に施されていた。持ってみるとまるで私のために造られたように手にフィットし、重さも感じなかった。まさかヒューゴが?………後で確認しておこう。とりあえずレイピアを腰の剣の隣に納めて部屋を出た。ギラリと繊細なレイピアからとは思えない貪欲な輝きが放たれていたのには気付かず。



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