音素の流れがふわふわと漂う空間に私はいた。辺りに散らばっていた第7音素が集まって私を包み込む。「クロエ、」…あ、ジェイドの声がする。声のする方向に片手を伸ばし、て、みるぅうぅうぅっ!




「………一体貴方は何がしたいんですか?」

「…え、あ、おはよ…」


さらりとキャラメルのような甘い色の髪を持て余しながらジェイドはため息をついた。レディの寝室に勝手に入るなんて、と言ったら2人の仲だからと返された。……………。


てゆーか、ここ……ピオニーの城の医務室?…え、皇帝陛下を呼び捨て?いーのいーの、陛下って呼んだらストーキングする程私の後ろに引っ付いて治せ治せと呪文のように呟いてたし…。アスランさんも笑ってたし、いいのキラッ。


「さて、なんで貴方は倒れて気絶しまう程力を使ったんですか?あれほど私が注意したでしょう」

「だ、だって…久しぶりの実戦じゃん?思わず………えへ」


ちょっと舌を出してかわいこぶってみたらもの凄い目で見られた。けっ!またため息をつくジェイドを置いて不機嫌な顔のままベッドを飛び出して自室に戻ろうとすると、ガッチリ肩を掴まれた。振り返ると眉を寄せて私を見つめる整った顔。


「何処に行くつもりですか?」
「自分の部屋よ」

「………ハァ、いいえ、今からクロエには私と共にキムラスカへ和平の使者として付いてきてもらいます」


驚いて目を見開いた。やっと、やっと平和条約を結ぶのか。戦争の為にダアトとマルクトの限られた場所しか行った事のないクロエにとっては、自由になるためこの旅はぜひとも参加したかった。それを向こうから許可してくれるなんて…。出れるか分からない旅の為に張り切ってしまった、なんてさっきは言いたくなかった。でもそんな事どうでもいい。もうすぐ誰の干渉も受けずに世界を回れる!そして―――――


「陛下が連れていけと煩くて…。まあ、途中まではタルタロスを使うんですけどね」

「それでもいいです!うわあ、不謹慎だけど楽しみだな!」


ニコニコとさっきまで仏頂面だった者とは思えない笑顔だった。ジェイドはこれは重症だ、と思った。何でこんなにこの少女に惹かれているのだろうか。





預言に一番縛られた、全てを知る者。


(笑顔の裏に隠された、これから起こる数多の出来事…それは幸福か災いか)

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