よくやくダリルシェイドで1番豪勢なお屋敷に私たちは着いた。扉が開かれてたくさんのメイドたちが並んで主を招きいれた。
「「「「「お帰りなさいませ、ヒューゴ様」」」」」
「マリアンは居るか、この少年の世話を頼む」
「畏まりました」
「―…よろしくお願いします」
メイド長と思われる女の人は私を2階の綺麗な部屋へと案内した。お風呂に入るように言われ、服を手渡され、マリアンをその後で呼ぶと言って立ち去っていった。お言葉に甘えてボロボロになった服を脱いで温かい湯舟に身を沈めた。
「……これから、どうしよう……」
この世界にジェイドやピオニー、イオンもアニスもルークもティアもガイもナタリアも居ない。わたしは、ひとりぼっち。
「その前に…疑われてたんだっけ…なぁんだ、前から独りじゃん」
嗤いながらぽたぽたと涙が溢れた。声を押し殺しても、嗚咽が止まらない。浴室の中に響く声を湯気が包んでいるようだった。
***
まだ赤い目元を冷やそうとタオル1枚を巻いて部屋に冷蔵庫はないかなーと浴室の扉を開いた時だった。開けた先には黒い長い髪を持った少女が立っていて、大きな目を更に大きく見開かせていた。視線の先には、私の胸元。……………え、あ、ええっ!?
「……クロエ様は、女性だったのですか…」
「あ、はは…は……」
早速バレたよ。
***
服に着替えて暖かいココアを貰って私たちはソファーに向かい合わせに座った。とりあえず、女であること、その事を黙ってて欲しいことを話しておいた。マリアンさんはにっこり笑って快く承知してくれた。
「それではサラシや下着などは私にお申しつけ下さい。私が内密にご用意します」
「す、すいませんマリアンさん…」
「マリアン、とお呼び下さい。それでは服を合わせに行きましょう」
え、これでいいんですが…。そう言う私にお構い無しにマリアンは衣装部屋へと連れ込んだ。……やけに、キラッキラしてるよ瞳が。サラシと男物の服を手一杯渡してきて着替えるようにと隅のフィッティングルームに押し込まれた。………ワォ。
「この服…未来のリオンのに似てる…」
色違い、というのが正しいのだろう。黒を基調にしたデザインで、白い細身のズボンが用意された。着替えるとマリアンがにっこりしながら次の洋服を持って待っていた。丁重にお断りしておいた。