わたしは救えなかった。
わたしは、図に乗っていたのだ。
未来を知ってるから、力があるから、変えられると思っていた。
そんなに、簡単に物事は上手くいかないってことくらい知っていたはずなんだけどなァ…。
そうか、暗示は前からかけていたのか。あの1回でやろうとしたわけではなかったのか。


両手を伸ばしても掴んでいたものは在ったのだろうか。私の存在、価値は必要でなかったのか。私、私…要らなかった?


















冷たい何かが頬に当たった。ぽたぽたと液体のように何度も何度も頬を伝い濡らした。重たい瞼を開けると暗い曇天が目に入った。――…雨?身体を起こすと少し違和感があった。手の平を見てみる。血と、土。ぼんやりとした頭のまま立ち上がってみた。自分が使ってた剣が転がっていたのでよいしょと呟きながらそれを拾って腰についてた鞘に納めた。辺りを見回してみて、ようやく違和感の正体に気が付いた。


「音素が…ない?」


いや、少しは感じる。でも微々たるものだ。そう、まるで……他の世界に来たようだった。元の世界に戻ってこれた?でもそのような感じはしない。むしろ他のテイルズのようだ。服はあの時のまま。―――……あの、時?っ!!そうだ、私…わた、し…っ。


「いやぁあああぁあああぁああっ!!!!!」


頭がいたい、もう思い出したくもない!頭を抱えて座り込んだ。怖い、ジェイドも、みんなも、自分ですら。


そんな時になにかの気配がした。顔をゆっくりあげると紫色の瞳が見えた。…魔物。私は力無く笑って立ち上がった。剣を引き抜いて構える。


「…来なさい、下等生物」



***


ちゃりん、と音がなった。魔物が倒れた所にはコインのようなものが落ちていた。……レンズ?ってことは…デスティニー!?これもたしか、最後はリオンを救われないやつだよね…。なんで、ここに来ちゃったの?私はアクゼリュス崩壊に巻き込まれて、譜歌を使って助かって、皆と合流するつもりだったのに…。とにかく、ここにいても仕方ない。モンスターを倒してたくさんレンズをゲットしながら町にいこう。レンズを換金して、服とか必要なものを買って…。えーっと、護衛とか仕事した方がいいよね?あー服がアビスのだし、ボロボロだなあ。そんな事を考えながら今居る森から出ることにした。


やっと道を見つけて、とぼとぼと歩いていると視界が暗い緑の森から灰色の空がよく見える出口へと抜け出す事が出来た。そこからは丘のように下っていけ、馬車がモンスターに襲われていた。………………モンスターに、襲われていた?…って!!!!!駄目じゃんそれ!!

慌てて丘を下ると馬車の業者が護身用と思われる短い剣でしっしっとモンスターを威嚇させていた。でもグルグルと唸っていたモンスターはそれを気にせず吠えながら馬車の業者へと襲い掛かった。


「ひっ、ひいぃっ!」

「しゃがんでおじさん!スプラッシュ!」


それは直撃してモンスターは威嚇しながら少し遠くへ避難した。モンスターごときにだって敵視されたら痛い。早く、終わらせたい。走り出して構えた剣を素早く動かした。モンスターはそれを避けて炎を吹き出して距離をとった。どうやら強い、方だ。でも…――


「――天光満つる所我は有り、黄泉の門開く所に汝有り、出でよ神の雷!…これで終わりよ、インディグネイション!」


目が眩むような光が天から落ちてきた。雷はモンスターに直撃し、ぴくりとも動かなくなった。剣を納めて私は、腰の抜けた業者に手を差し延べた。ホッとした表情で彼は私の手を掴んで立ち上がった。
「ありがとうございます!お陰で助かりました」

「いえ……」


ふと馬車を見てみると結構高そうな装飾のされた、まるで貴族が乗っていそうなものだった。キィ、と音を立てて扉が開いた。中からは40代くらいの眼鏡をかけた長髪の男性が降りてきた。瞳は冷めていて、でも私を見る目は興味と玩具になるか見極めているようだった。


「!!」

「君にはお礼がしたい、ぜひ屋敷に来てくれるかな?」


ヒューゴ・ジルクリストは嘲笑った。

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