目を背けることしか出来なかった。苦しい、でも前を見据えなければならない。ルークもやけに似過ぎているアッシュを見て気持ち悪そうだった。アッシュに至っては反吐が出ると言葉を吐き出した。
「その声――あのいつもと違ったヘンな幻聴も……おまえか!?おまえ…いったい…!?」
「知りたいか?残念だが…このままここでくたばれ!!!」
圧倒的なアッシュの強さにルークは動揺した。どうにかして生き延びなければ…、そう思いながら自分の剣を探した。
―…どうする、どうする!!考えろ、考えるんだ!!
ふと背にある滝を思い出した。挑発のような、鬱憤を晴らしたいような、今までの苦労はお前のせいだと恨みを篭めたような鋭い瞳でルークに吠えた。そんなアッシュに背を向けて走り出した。
「貴様、何を!?」
「はあああああ!!襲爪雷斬!!!」
ルークの攻撃は一気に水で敵だけでなく味方にまで襲わせるものだった。
「な!?クロエっ!!」
「いけません!クロエ!」
ジェイドが叫びながら手を伸ばそうとした。でも私はイオンを指差した。ハッとしたジェイドは悔しそうに階段を駆け上がりイオンが立ちすくむ上段へと向かった。私の身体はシンクがしっかりと掴んだ。皆が水の中で苦しそうにした。濁流の中、シンクの仮面が外れた。ガイがこっちを見ている…!慌ててシンクの影になるように頭を抱きしめ流れていきそうになった仮面を取った。
仮面を私から受けとって付け直しながらシンクはぼやいた。
「まったく…なんてザマだ、儀式は間に合ったしクロエを手に入れたからいいようなものの…ボクたちはアンタの私情に付き合ってるヒマはないんだけどね!アッシュ!?」
「…くそっ…」
「(……ナタリア王女…因縁とはこのことか…)」
「…………なんで、私こっちに居るの?」
ベタベタとした服の端を絞りながらぼやくとアッシュは舌打ちをした。シンクは私の肩をガシッと掴んで諭してきた。
「何言ってんたよ!ボクがクロエと一緒に居たいからに決まってんじゃん!」
「そ、そんなに私たち親しくないよね…?」
「親しいとか時間じゃない!想いだよ…!」
あれ、こんなにシンクって執着とか想いとかって言うような子だっけ?ぎゅうううと抱きしめられながら目を遠くにやった。……みんな、大丈夫かな?