「ス…スコアが守んなきゃいけないものだってくらいは俺を知ってるよ!んでそれがなんだってんだ?」

その言葉に陛下はティアを呼んで譜石に書かれたスコアを詠ませた。


「ND2000…ローレライの力を継ぐ者キムラスカに誕生す、其れは王族に連なる赤い髪の男児なり、名を聖なる焔の光と称す――彼はキムラスカ・ランバルディアを新たな繁栄に導くだろう」

「ND2018…ローレライの力を継ぐ若者、人々を引き連れ鉱山の街へ向かう、そこで…、……この先は欠けています」


「聞いただろう、聖なる焔の光(ルーク)よ!!おまえは選ばれた若者なのだ」


「ルーク!!おまえを狙う輩から護るため我々はおまえにやむなく軟禁生活を強いてきた…だが今こそ外の世界で英雄となるときなのだよ!!」


ルークがそこで反応した。………ちょっと、待って?あの後ルークはヴァンと話したりしていないはず。なのに、なんで英雄に反応してるの。


「どうだね!!引き受ける気になったか!!ルークよ!!」



***




俺が英雄…そうだ!!やっぱり師匠の言うとおりなんだ!!あの、手紙通りだ!ルークはそう思いながら口元を引き締めた。


「……俺がやるしかねーんだろ?いいぜ!!やってやるよ」


大人たちはその言葉に喜びを隠しきれないようだった。ジェイドはそんな状態に少し疑問を持ってたようで「英雄…ねェ」と呟いた。ティアもまるで夢物語のようにポカンとしていた。ナタリアも怖い表情で静かにその様子を見ていた。


「それでは同行者は誰を?」
「カーティス大佐にはすでにお話を」

「誰でもいーよ別に」
「おおそうだガイを世話係として連れて行くといい!」
「クロエ殿もよろしいですかな?」

「は、はい…!」

「私もオラクルとして同行させていただきます」


その言葉にぴくんとしたルークをナタリアは見逃さなかった。


「お父様…やはり私も使者としてルークとともに!」


そう申し出た娘に急にインゴベルトはキッとそっちを見遣った。許さない、決してと表情は明らかだった。

(そりゃーそうだよね、崩壊する街に大切な子供を行かせる親なんかどこにも居ないしね。)



「ナタリア!!それはならぬと昨晩も申したであろう…グランツ謡将にも話は通してある、謡将がいてくれれば安心だろう」

まだナタリアは不安そうに言葉を濁した。それよりも…………隣からの視線が痛いんですけど!小さな声で「お仕置きですね」って聞こえたのは気のせいだよね、ね!?クロエは顔面を蒼白とさせていた。


「え!!ヴァン師匠も戻ってきてるのか!?」


色々小難しい話よりもヴァン師匠が一緒に来てくれる!嬉しそうなルークはこの話が終わった後、すぐに謁見の間から出ていってさっき聞いたヴァンが居るであろう部屋へと向かった。私はそれを止めようとした矢先後ろから私を引き止める声がした。―――ナタリアだった。


「クロエさん、お話があるのですがよろしくて?」

「…っ、えっ?は、はい…」


それから連れられたのはナタリアの自室だった。ソファを勧められて座るとメイドさんがいい香りの紅茶を目の前のテーブルに置いてくれた。2人対峙してほんの少しだけ沈黙が流れた。


「あの…どうかなさいましたか?」


「まぁ、ユリアの再来様が私に敬語なんて!普通に接して下さいな」


「は、…うん、どうしたのナタリア?」


「実はルークの事ですの…」


と言いながらさっき聞いた話を私にしてくれた。嗚呼………だからやけにこの部屋に通されてから長い間待たされてたんだ。ヴァンが昔ルークを誘拐したこと、2人でダアトに亡命してしまうこと。その言葉をようやく言った後に堪えられなかったのかぽろりとナタリアの瞳から涙が零れた。


「申し訳ありません…女王の私がつい先日会ったばかりの貴女に涙を見せるなんて…でも貴女なら何か、解決できるのではないかと思いまして…」


「………それなら、ルークたちと旅をしてみては?」


「旅を、ですの?」


少し迷った後、ナタリアは直ぐに決心した面持ちになり「少々お待ちになって」と言って隣の部屋へと消えていった。10分程してからナタリアはドレスから戦闘用の服へと着替え、肩からは弓矢を背負っていた。


「それなら急ぎましょう!皆さんが先に行ってしまいますわ」

「それなら…下で話をしていると思うよ」


「どうしてですの?」


「……………イオンが、連れ去られたから」




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