昨日のジェイドの、…えっと、その………っ、キスのおかげでなかなか寝付けなかった。朝メイドが起こしに来て、ご飯を食べて、皆がジェイドの部屋に集まった。――昨日の親書についてのようだ。どうやら、受諾されたようだった。それからピオニーが頼んだ障気が発生した都市、アクゼリュスから市民を救援する事について話し合いになった。ジェイドは私はイオンやアニスと共にバチカルに残れと言われた。その言葉にさっきまでの気まずさなんて吹っ飛んでしまった。思わず座っていた所から立ち上がった。
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side J
「――これは…音素同位体の研究だな…」
昨日頼んでおいたコーラル城でアリエッタが落とした音譜盤の解析結果にザッと目を通してみた。これで六神将の本当の狙いに関するヒントが何かつかめるかもしれない。
「3.141592…ローレライの音素振動数?これとルークにいったいなんの関係が――…」
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「わ、私を連れていかないってどーゆー事ですかジェイドさん!?」
「貴女に死なれては困るので」
ふと数時間前の解析結果を思い出しながら言った言葉にクロエが不満なようだ。思考の海から引きもどって単純かつ妥当な解答をクロエに返すとぐっ、と詰まってしまうが、苦し紛れに言い返してきた。―――目は、逸らしたまま。イオンとアニスも不自然なクロエには気付いているでしょうが何も言ってはこない。……確かに、昨日の事は軽率な行動だったかもしれません。ですが、この私が、本能に従ってしまうなんてね。でもしたかったのですよ、貴女に。
「でもインゴベルト陛下は私にもぜひ同行して貰いたいって!」
「ピオニー陛下はそれを許してはくれていませんよ?それに陛下にとばっちりを受けるのは貴女だけでなくなるでしょうが」
なんだそれ自分の為か!と突っ込まれたが私は頑としてクロエがアクゼリュスに行く事に大反対した。…危ないところに目を離したら危ないクロエを連れていけるわけないじゃないですか。ピオニー陛下も、………私も貴女が居なくなるのは困るのですよ。
「…貴女に、クロエに何かあったら困るんですよ」
「…何か言いましたか?」
「………いえ、別に」
丁度その時コンコンと扉をノックする音が聞こえた。開かれた扉から赤い軍服と、見覚えのある金髪が見えた。
「あーっ、ガイじゃーん!」
「よっ!アニス、イオン、旦那にクロエ」
「昨日ぶりですね、ガイ」
「ガイだー…いけアニスっ」
アニスが指を曲げ伸ばししながら近寄るとガイはひぃいと情けない声を出して赤の軍服――セシル将軍の後ろに隠れた。(全く…。)苦笑しながら将軍はピシリと敬礼した。どことなく我が国の将軍にも似てますねぇ。
「皆さま、陛下がお呼びですので謁見の間までご足労願います」
「おやおや、対応が早いことで」
「こらジェイド!すいません…」
なぜか保護者のようにクロエが私の髪を引っつかんで謝らせようとした。ゴホン、と咳をすると顔を真っ青にしてセシル将軍の後ろにいるガイの後ろに隠れた。勿論(クロエ以外は)女性恐怖症のガイがセシル将軍に近付きすぎてバタンと倒れたのは言うまでもありませんね。