王様への謁見が終わると皆がルークの屋敷に行こうと騒ぎ出した。ティアの顔を見ると少し緊張しているようだった。さっきのモースの話もあるからだと思うけど実際のところは謝る、ためだからだろう。城より少し下にあるルークの屋敷はもの凄く、大きかった。……そりゃ…貴族だし、私だって、マルクトではいいとこ住んでたし、ダアトでだって軟禁生活とは言えども最高級のもてなしはされてたと思う。でも、やっぱ自分の家が豪華なのは羨ましい、かも。
「ルークぼっちゃま!お帰りをお待ちしておりましたぞ!!」
屋敷に着いた途端にナイスミドルが涙ぐみながら駆け寄ってきた。
「私ども一同どれだけルーク様のご無事を祈っておりましたこっか!!あれ以来いったいどこでどうされていたのです、おお…さてはあなた方がルーク様をこのバチカルまで送り届けてくださったのですねこのラムダス感謝してもしきれませぬ!!」
この長台詞の後にもマシンガンのような速さでルークの怪我や長旅の疲れなどを気にしていた。わらわらと寄ってきたメイドたちもルークを見てホッとしていた。
「父上は?」
「ファブレ公爵は火急のご用件でルーク様と入れ違いに登城されたところです…それよりもルーク様、早く奥様のところへ―――」
「ルーク!!」
奥の扉から女性の声がした。声からして美しい女性だと分かるくらいの美声にルークはげっと顔を歪ませた。向こうから金髪のドレスを纏った少女さをまだ残した女性がやってきた。――この国の王女、ナタリアだった。
「心配しましたのよルーク!!お変わりありませんのね!!ご無事で何よりですわ」
「超美人!!何!?誰!?」
オロオロとしているアニスにガイがルークの婚約者だと伝えた。外野はびっくりしている。勿論、知っていた私やそこまで興味のないジェイドは普通だったけど…。そんな私たちを他所にルークは視線を斜め上にしながら怠そうにしていた。……よっぽど、ナタリアの事嫌なのかな。
「あーまーな、つーかおまえらが大げさなんだっつーの!ところでなんでおまえここにいんの?城に帰れば?」
「……」
ナタリアの怒りがゴゴゴと高まっていた。私は耳をそっと塞いだ。
「ルーク!!なんですの?その態度は!!―――――!?―――――――――――!!ルーク!?」
耳を塞いでたお陰で何かをわんわん言っていることしか分からなかった。ジェイドがナタリアの怒りの説教が収まった所で耳元でボソリと呟いてきた。
「クロエ、こうなることが分かってるなら先に言って下さい、耳が痛いです」
「先手必勝なんですよハハハ」
「そうだわ!こんなことをしてる場合では…ルーク、早くシュザンヌ様のところへ」
「母上がどうかしたのか?」
「あなたがいなくなったあと病で倒れておられるのよ、私はそのお見舞いに来ていましまの…早くお顔を見せてさしあげて」
慌ててルークがさっきナタリアが出てきた扉の奥の廊下へと走った。ティアも謝るためにルークの後を追った。その時にちょうど城内に部屋の準備が整ったと連絡が入った。
「では僕たちはここで失礼することにしましょう」
「んじゃ俺も今回のことを騎士団に報告にいくわ」
「いったん解散ですね」
イオンはルークの消え去った方向を穏やかな表情で見つめながら言った。
「ほらほらイオン様、クロエ、お城に行こうよ!」
「はいそうですね」
「あ…私…」
「なにか不都合でも?」
ジェイドが問い掛けてきた。私は縮こまりながらルークとお喋りする約束があって…と言った。ジェイドはメガネを上げながらため息をついて了承した。