やっとコーラル城に着いたクロエたちは薄暗い場内をさ迷い歩いていた。何処を見ても赤い髪は見当たらず、不思議な魔物がわちゃわちゃと居るだけであった。ケタケタケタ、と笑う、変な、魔物が。
「「ぎゃー!!!」」
「「「「「………」」」」」
アニスとクロエだった。
「も〜〜ヤダヤダ気持ち悪い!!まるでおばけ屋敷みたい…いったいなんなのぉココ!?」
しっしっと魔物を追い払いながらガイがアニスをちらっと見てから上を見上げた。ホコリはかぶっていても昔は豪勢なものだったと窺えるものかちらほらあった。
「ここコーラル城はファブレ公爵家…ルークん家の元別荘だよ」
「戦争でマルクトの侵攻がせまってやむなく棄てたみたいね、…ま、今じゃすっかり廃墟だけど」
びくつきながらもそう言ったクロエの言葉に一瞬だけ緊迫感が漂った。――ジェイドとガイだった。それと違う意味でアニスも。
「こ…この大きなお城が別荘!?ふわ〜…やっぱりルーク様って超お金持ち!いや〜んステキどうしよう〜!」
(…あまりの衝撃によりクロエの配慮により一部ハートを記号に変えました、「だって…ねえ汗」)
そんなアニスを放っておくティアやイオン、ジェイドにヴァンはある意味最強だなとクロエとガイが遠い目をしている頃―――。ティアは辺りを見回しながらルークを探した。やはりそんな簡単に見つかる、ということはなさそうだ。アニスはイライラとしながらアリエッタを絶賛侮辱中。
「アリエッタは僕とクロエに来いと言いました、おそらくは僕たちとひきかおにルークを返すつもりなのでしょうね…」
「今イオン様とクロエ様を彼らにわたすわけにはいかぬ…なんとしてもアリエッタを討伐し、ルークを取り戻す」
「それしかなさそーだよなァ…」
困った、と天井を仰いだガイはふと昔の事を思い出した。そうだ、この城は…。
「7年前にルークが記憶をなくした状態で発見されたのもこのコーラル城だったなぁ…」
え、と皆が顔を見合わせた。クロエは黙ったまま。そんなクロエをジェイドとヴァンはじっと見つめていた。
「ぐ…偶然だよねぇ?」
「でも確かにおかしいわ…この城」
ティアはさっきより少し警戒しながら、もう長く誰も住んでないならこの城はもっと荒れ果てているはずだと言った。
「…この通路には人の手が入って―――」
「「!!!」」
「で、でだぁあアあァアぁ!!!!!」
クロエが思いっきし叫んだ。慌ててジェイドが槍を取り出してクロエの腰を掴んで後ろに跳びずさった。アニスはイオンの盾になるような形で避け、ティアはヴァンと供にジェイドたちとは逆の方向に跳び逃げた。ガイは攻撃を食らわしたがあまり効かずにそのまま攻撃の勢いで後方へ戻った。それと同時に壁が現れ2人を取り残した形で分断された。
「ふむ…残念ながらこの壁を破壊するには時間を食いそうですね」
「しばらく別行動…しかないな」
「それよりもぉ!クロエったらあかぁわいい!」
アニスがわくわくとジェイドの方を見た。ジェイドの腰に落ちるもんか!としがみついたクロエが居た。どうやらさっきの魔物が怖かったようだ。珍しくぎゅうぅうぅ、と抱きしめているクロエを見てジェイドとイオン、アニスは少し和んでしまった。
「「「(か、可愛い…)」」」
「なぁ…先へ進まないか?」
やはりガイだけが普通だった。その頃、ティアたちもギクシャクとした雰囲気ながらも先に進もうとしていた。
(おや、ガイはクロエの事をどうとも思わないんですか?)
(そ、そんなわけないだろ!こんな状況じゃなきゃ、撫でくりまわし…あ、)
(((あ、)))
(怖いよ怖いよ怖いよ怖いよ怖いよ怖いよ…)