「な〜るほど…音素振動数まで同じとはねぇ…これは完璧な存在ですよ」
ディストが珍しく楽しそうに音機関に乗せたルークを眺めた。画面に写しだされるデータを音譜盤にコピーしてニヤニヤ笑う男を気持ち悪そうにアリエッタと仮面を付けた少年――シンクが見ていた。どうでもよさそうにシンクが口を開いた。
「そんなことはどうでもいいよ…早く引き払ったほうがいいディスト、ヤツらがまもなくやってくる」
「そんなにここの情報が大事なら最初からここを使わせなければよかったでしょう?シンク」
その言葉にため息をついたシンクはあの頑固な赤毛の憎い顔を思い出した。ああウザいったりゃありゃしない。
「あのバカが勝手に決めたんだよ、あとで閣下にたっぷりお仕置きしてもらわないとね…」
「…シンク、クロエも来る…です」
その言葉にガバッとシンク(とディスト)が嬉しそうに振り向いた。
「本当だなアリエッタ、全く…クロエとは全然会ってなかったから早く会いたいよそれなのにあの導師の傍に居るんだろう?あと死霊使いと守護役も居るとか…ずるすぎるよ特に死霊使い!3年もクロエと一緒にいたんだろう!!いつかずったずたのけちょんけちょんにしてやる…!」
「まああのクロエが来るのですか!これは私も此処に残っ―――」
「「残るな」」
揃った2人の声にガビーンと効果音を付けながらふらふら椅子のまま動くディスト。その時うぅ、と唸りながらルークが目を少し開いた。光が眩しいのか細めるようにして少しだけ翡翠の瞳が覗いた。
「――ほら、こっちのバカもお目覚めみたいだよ?」
その言葉にその場を立ち去ろうとしたディストは振り返ってにんまり笑った。
「構いませんよ、もうこいつの同調フォンスロットは開きましたから…」
アリエッタは話がよく分からず、ただ腕の中にある人形をぎゅうっと抱きしめた。まだキィン、と音機関から音が、止まらない。