「もう俺たちのうちの誰かが傷つくところは見たくねえ!!決心したんだ!!俺も戦う、俺もちゃんと責任を背負う!!」


ティアは悩んでいるようだった。たしかに戦力が多い方が心強い、しかしルークの実践力は少ないし、死を初めて体験したばかり。それで人を傷つけることができるのか。


「…いいじゃありませんか、見せてもらいましょうティア、ルークの決心とやらをね」



***


今日は野宿することになった。星と譜石の輝く暗闇に、私たちが焚く火が輝いていた。静かに炎を見つめる私の隣にそっと軍服を着た彼がよいしょと座り込んだ。


「スコアがお嫌いな貴女は一体、どんな預言に振り回されているんですか?」

「…、知らなくていいことまで知るのよ?知ったら、もう後退りは出来ないの……」

「私には話してくれないのですか?」

「無理」


冷たくあしらった。そう、ここに居る全員に関わる話。深淵という名のあるゲームから始まった、悲しい物語。人々の死、絶望、憎しみ、悲しみ。


「……貴女はそうやって溜め込んで、私たちと壁を作るのですか?それともこの状況を一人楽しんでいるんですか」

「……え、今、なん、て…?」

「違うんですか?私たちが預言通りに振り回されるのを、裏では笑って馬鹿にし―――――」

「本当にそう、お思いなら私は貴方を軽蔑しますジェイド・カーティス、いいえジェイド・バルフォア」


思わず殺気を出してしまった。やはり、まだ引きずってるんだ私も、彼も。そして彼は私を含めた人間を信用せず疑いから入ら込んでいるんだ。ジェイドは少し驚いたようにメガネをずりあげて私を真っ直ぐ見つめた。冷たい、視線。


「……冗談ですよ、ちょっとお痛が過ぎましたね」

「本当ですよ……お話はおしまいですか?明日も早いですしもう寝ましょう」


その氷の様な瞳をもう見たくなくて、私は向こうを向いてすぐ目を閉じた。



***


私は冷静に分析して、有り得そうな仮定を言ってみたつもりだった。それがクロエの逆鱗に触れたようだった。あんな殺気、獣にすら出した事はなかったあの優しい彼女が。―――それを引き起こしたのは自分なのですがね。見たくないとばかりにこちらに背を向けた彼女の背中を見て苦笑するしか無かった。でも、上手く笑えている自信がない。あの事、をクロエが知っていたのか…。あんな、残酷な事を。忘れたくても忘れられない白と赤の記憶、自らも負傷してまで研究、を続けた日々。瞼を閉じるとまるで繊細に蘇る。……嗚呼、これは忘れ去られてはいけない罪なのでしょうね。


「…ネビリム先生、」


私は、間違っていますか?



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テーマ「人外ファンタジー」
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