「クロエ…いいたい事と聞きたい事が山ほどありますが、それは親書をキムラスカに渡してからにします、よろしいですね」

「………は、い」


ジェイドの言葉が突き刺さる。…分かってる。私はジェイドの言うこと、思った事にほとんど全てに反したから。それが今までの私では考えられない、つまり預言に関係ある。そう捉えたのであろう。まだ何かを言おうとジェイドは口を開いたが、私たちは次の言葉を言う事はなかった。


「もう〜心配したんですよォ!?」

「…それはこっちのセリフですよアニス」

「無事でよかった!」


安心するイオンをそっちのけでルークへ抱き着くアニス。一気に私の中のシリアスが無くなった。


「あれ?そちらはどなたですかぁ?」

「俺はガイ、ルークん家の使用人だ、よろしくな」

「へえールーク様の!!よろしくです!!」


アニスは将来の家来がこんなにイケメンなんだと嬉しそうに手を差し出した。勿論、女性に触れないガイは極端に後退りした。


――――なぜ、私には触れたんだろう。


ジェイドの背中でそんな事を考えていた。そう、さっきなんとなく手を握ってみたらガッチリと握りしめる事が出来たのだ。思わずガイは私を思いっきり抱きしめた。(その時なぜか封印術を食らってるはずのジェイドから秘奥義が出かかっていた。)なんだかんだ、私と同じくイオンの体力も限界らしく、宿で休息を取ることになった。ジェイドはイオンだけでなくティアと私も気遣かっているようだ。


「ティアとクロエ、あなたたちの具合のほうは?」

「えぇ私はもう…平気です、大佐の封印術はいかがですか?」

「少しずつ解除してはいますがもう少しかかりそうですね」


チラリとジェイドを見ると、"もう少し"どころではないことが分かった。でも、私には何もできない。私はジェイドの問い掛けにすら答えず下を向き続けた。


「まぁ、元の能力が違いますからこの状態でもみなさんと遜色ないかと」


このオッサン、ムカつく…!ガイが呆れてため息をついた。


「アニス、例のものは?」

「はい!!もちろん!!」


そう言ってアニスはトクナガから筒状のものを取り出した。綺麗な装飾が施されており、いかにも親書が入ってるという感じがした。

「これが…」

「えぇ、ピオニー陛下より託された親書です、マルクト帝国とキムラスカ王国の戦争を回避するための…ね」

「私たちはこの親書を無事にキムラスカ王国インゴベルト六世――つまりルークの伯父様に届けて二国間に和解と平和をもたらすことが重大な使命なんだよ」


私はそう言ってからイオンの方を見た。苦しそうに眉間にシワを寄せて、息が上がっている。人差し指をイオンの眉間に押して小さく譜術を施す。ハッとティアが息を飲んだ。淡い光がイオンを包み込むと、少し顔色が良くなっているように見えた。


「そのためには敵の手より親書を守り抜くことはもちろん、両国から厚い信頼を得ているローレライ教団の最高指導者――導師イオンの存在は不可欠なのです」


それからジェイドの話は奇襲に備えた態勢を提案した。イオンとアニス、ルークと私を中心に残りの3人で三角の陣形をとるようだった。


「なっ!私は戦えます!」

「それでは先程は言いませんでしたがあえて言います、貴女の"ユリアの再来"という地位も必要なんです…怪我をされたら困ります」


地位、という言葉にピクッとイオンとルークが反応した。なんで、わたしたちほんにんをみてくれないの?そう思った途端にティアが椅子から崩れ落ちた。本人は貧血だと言い張ったが、さすがに危なすぎる。


「お…俺も戦うよ!!――戦わせてくれ」

「ルーク…いいのよ私、あなたが民間人だということを知ってたのに…理解はできていなかったわ、今までごめんなさい」

「な…なんでおまえが謝るんだ?そのケガだって俺のせいで…」

「私は軍人だもの、民間人を守るのは当然よ」


ティアはルークを思って戦わなくていいと諭した。そう、7歳の子供にムリヤリ暴力で自分の正しいと思うことを突き通すことは、大きなものを背負わせることになる。人間の生を、生活、可能性を奪いなくす。私も、いつか人を殺さなくてはいけない。―――昔のように、平和に浸る場所は此処には何処にもないから。


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