目を開くと青い空が目に入った。どうやら辺りのざわめきで目覚めてしまったようだ。ライガに乗っていたせいか、まだ頭がグラグラする。そんなクロエに誰かが切り付けられる音が聞こえてきた。舌打ちと共に呻き声と倒れこむ大きな音。


「捕らえろ!」


リグレットが地面に落ちた譜銃を取り上げ構えた。形勢はどうやら最悪だった。地へと投げ出された身体を起こして私は手を前へ翳した。


「――輝く御名のもと、地を這う穢れし魂に裁きの光を雨と降らせん…」


「っ、その技は…!いけないクロエ!」


「安息に眠れ、罪深き者よ」


クロエは力が溢れ出すのを感じた。危険を察知したジェイドはティアとルークを地面に押し付けた。リグレットもこの状態は危険と思ったのか慌てて大きく後方へ跳びずさった。



「ジャッジメント!」


光で空と大地が割れたように見えた。ジャッジメントに当たった兵士はひとたまりもなく、あっけなく倒れた。残ったのは数人。クロエは予想以上の兵士の数を一気に消すためにこの大技を使ったようだ。まだ少し煙りと焦げた臭いが漂う中、それでもまだリグレットたちの方が優勢だった。


「馬鹿な小娘、まだ分からぬのか」

「どっちが、馬鹿なの、かしら」


ジェイドにもたれかかるようにしてクロエは不敵に笑みを浮かべた。その自信は何かあるのか、それともただの虚栄か。リグレットは照準をクロエに合わせてゆっくり近寄ろうとした。――――上からの人の気配を察知しなければ。


キラリと何かが落ちてきた。それをジェイドが見逃すはずなく、素早くかろうじてジャッジメントから逃れたアリエッタへ槍を向けた。増えた人、それは―――。


「ガイ様華麗に参上!!」


思わぬ敵にリグレットは顔を歪ませた。この位置からでは奴らを狙えず、かつ動くと金髪の彼の刃の餌食となる。小さく舌打ちをした。


「うちの坊ちゃんを捜しにきてみりゃなんの騒ぎだこりゃあ、とりあえずみんなまとめて返してもらうぜ」

「形勢逆転ですね」



***



大きな音を立てて非常ハッチが閉まった。警戒が薄れた所で皆がティアに寄っていった。


「ティアは!?」

「大丈夫…腕を斬られただけのようです、気絶しているようですが命に別状はないでしょう…イオン様お怪我は」

「いえ僕は…ですがアニスと親書の行方が」


顔を真っ青にさせてイオンは森の方をチラリと見た。それから私の隣に腰を降ろして背中をさすってくれた。


「追っ手を振り切ろうと逃げ込んだ森ではぐれてしまったんです、無事でいてくれるといいのですが…」

「アニスは、優れた人形士…信じましょう」


私は静かにそう言った。ジェイドは合流地点を決めてあるのでそこに向かおうと提案した。ガイが船の中に残る船員の安否を促したが、ジェイドはただ首をふった。……生かしておくわけがない。イオンが前を見据えた。


「…行きましょう、僕たちがここで捕まってしまったらもっとたくさんの人が戦争で亡くなるのですから」


その言葉はまるで自分に言い聞かせているようだった。ルークはただ、ティアを見つめていた。

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