鮮血のアッシュ。否、ルーク・フォン・ファブレ。ヴァン謡将が誘拐したオリジナルルーク。クロエたちがさっきまで一緒にいたのは、模造品、レプリカ。フォミクリーで作られたルークはなにも知らないまま軟禁、本物は親とも婚約者とも引き裂かれ、ひたすら孤独に耐え剣を磨いた。リグレットはそんなお伽話のような現実にフッと笑いながらも下にいる自分が敬愛する閣下に愚かにも翻弄される彼らを見下ろした。


「アッシュ!そのへんにしておけ、閣下のご命令を忘れたか?」

「リグレットか…ちっ――捕らえて閉じ込めておけ!」

「はっ!隊長!!」

「報告します!導師イオンをタルタロス後方の森林地帯にて拘束しました」


その言葉にリグレットは自らが行く事をアッシュに告げる。アッシュもどうでもいいというように返事をした。どうやら彼は、今自分が腕を掴んでいる相手の方に、気がいっているようだ。そう、ユリアの再来クロエに。ふと後ろを見ると、拘束されながらもアッシュとクロエを深刻そうな顔で見つめる死霊使いがいた。

「…ほう、さすが」

そう呟いてリグレットは、導師がいるという森林地帯へ向かう事にした。閣下の為に私にはすべき事がある。奴ら、例え仲間のアッシュ、敵、ユリアの再来ですら駒の1つに過ぎない。否、私ですらヴァン・グランツからすれば駒であるのだろう。皮肉にも、私は彼を愛している。だからそれを甘んじて受け入れるのだ。踏み出す一歩がなんとなく重く感じた。


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テーマ「人外ファンタジー」
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