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「ティアさんすごいですの!!」
ティアの譜歌のおかげで難無く進む私たち。その間にも私はまだ瞼の裏に赤が浮かんでいた。それをジェイドは気が付いているようだった。だから、戻ってきた事を怒らないようだ。
私は実戦、といっても殺し合いをしたわけではない。竹刀や魔物相手のみ。―ただのお遊びのようなもんだ、こんなことに比べれば。ルークと同じ、本当の実戦経験はない。
「ブリッジを取り戻します、ティアとクロエは私を手伝って下さい」
「えっ、わ、私も…ですか?」
「ここでは貴女は恰好の的です…あなた方の譜歌があればさほど時間はかからないでしょう」
「俺は?」
「ルークはそこで見張りをお願いします」
ジェイドの判断は正しかった。ルークの剣術はたしかに筋はいいし、強い方と言える。けれども圧倒的に実戦経験が少ない。それに、ラルゴの倒されるシーンで激しい動揺をみせていた…。その動揺が命に関わる判断を鈍らせてしまいかねない。
そう、ジェイドは正しかった。クロエを連れていく事も。
「………残ります」
「はい?」
「私は、ルークと、ここで見張りをします」
「……貴女は死にたいのですか」
「死なせたくないなら、早く行って下さい」
ぱちぱち、とまるで目からビームを出しているかのように睨み合う私たち。おれたのはジェイドだった。
「…………行きましょうティア」
「は、はい!」
取り残された私たちはやることもなく、入り口近くに立って寝こけている兵士たちを見つめていた。