薄暗い森を進む。大きな穴を横切ると、みゅうみゅうという鳴き声と、男女の声が聞こえた。思わずフードを深く被り直した。…バレてはいけないから。
祠の奥にライガクイーンのいる、昔に記憶していた原作を出来るだけ思い出しながら足場の悪いところを進み始めた。明るい光が差し込み、それと同時にもの凄く威嚇した声が鳴り響いた。急な殺気にドキドキしながらも、クイーンの前に立ち口を開いた。
「……ライガクイーン、ここは危険です」
私の声は、なぜか動物、魔物に伝わり、私にも理解できる。つまり、話せるのだ。これもユリアの力、……だと思う。
「来るな!!もうすぐ卵が孵化するところだ!!」
「クイーン、ここではなくいい餌馬ならもっと北の…島にあります」
「黙れ!お前を殺して子どものエサにしてやる!!」
孵化がもうすぐだからか、さらに獰猛なライガクイーン。私は更に声を張り上げた。早くしないとルークたちが来てしまうから。
「ユリアの生まれ変わりが言います!アリエッタが悲しまないためにも、アリエッタの妹弟たちのためにも移り住んで下さい!」
ユリアとアリエッタという単語に反応してか、クイーンからの殺気は少し収まった。しかし警戒心はまだある。どっしり立ち上がって探るように私の周りをぐるりと回る。
「……ユリア、だと?それに…アリエッタを知っているのか?」
「アリエッタは妹や弟の誕生を心待ちにしています。でもここにいたら卵もろとも貴女は殺されるわ!」
「…………」
ライガクイーンが考えている間に、後ろから3人分の足音が聞こえてきた。振り向くとちょうど穴からルークとティア、イオンが祠に入ってきたところだった。