「いいですか、貴女はタルタロスで待っていて下さい」
「そうですよぉ〜もしクロエに何かあったら私までお叱り受けちゃうんだからね!?」
もの凄い勢いのアニスに押されて、私はタルタルソース、もといタルタロスに残っていた。……こんなところ、譜歌を使えばイチコロだ。でも、私はまだ動くつもりはない。ジェイドたちが森に入り、ルークたちがライガと交渉する前に介入する。そこが重要だ。
そう、原作を変える。
ライガを逃がす。そしてアリエッタかの復讐をなくす。これがどのくらい後に関わってきて重要かは分からない。それでも、この物語は生きる意味を知る為の物語のせいか、生死が関わることが多い、多すぎる。……、それは必要なこと?
疑問を一旦頭から振り落として、部屋を出ながら私は声を出した。歌を謳うため。
「トゥエ レイ ツェ クロア リョ トゥエ ツェ」
―深淵へといざなう旋律―
パタン、と倒れる兵士たち。それらを跨いで私は予め用意しておいた黒いローブを羽織って非常ハッチへと進んだ。そう、後戻りしてる時間、いやそんな事を考えている時間すらないんだ。
それなら救える命に、手を差し伸ばさないと。お願い、間に合って…。